ルツ記(読み)ルツき(英語表記)The Book of Ruth

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ルツ記」の意味・わかりやすい解説

ルツ記
ルツき
Ruth; Book of Ruth

旧約聖書の中の第3部で,「諸書」として知られる個所に属する。ヘブル語聖書でルツ記は,ソロモンの頌歌,哀歌,伝道の書エステル記とともに5巻からなる巻物 (メギロース) を構成し,ユダヤ教の祭りのときには朗読されることになっている。ルツ記は,過越祭から 50日目にあたる五旬節のときに読まれる巻物である。
ルツ記は,主要登場人物であるモアブの女の名前からつけられた。彼女は,モアブにおいてユダ出身の夫婦の息子と結婚した。夫の死後,ルツは自国に残るより姑のナオミとともにユダに移り住むことを選んだ。その後ルツは,前夫の親戚にあたる裕福なボアズと結婚し,オベデを生む。同書の最後の方の記述によると,オベデはダビデの祖父にあたる。ルツがダビデの先祖だとするこの試みは,おそらく紀元前5世紀後期か紀元前4世紀頃につけ加えられたものと見られている。著者は,バビロン捕囚エルサレム神殿の再建 (紀元前 516年) のとち,明らかにユダヤ主義を特徴づける選民主義を改める目的でこの物語を書いた。ダビデの家系 (4・17~22) を加えた編集者は,異邦人の女のひ孫をダビデとすることで選民主義の改正をさらに一歩進めた。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ルツ記」の意味・わかりやすい解説

ルツ記
るつき
The Book of Ruth

『旧約聖書』中の諸書の一書。内容は女主人公ルツとその姑(しゅうとめ)ナオミの物語である。エリメレクと妻ナオミは、飢饉(ききん)のためユダのベツレヘムから2人の子を連れて異国のモアブに移住したが、夫エリメレクが亡くなり、モアブの女性と結婚していた息子たちにも先だたれて、ナオミは帰国することにした。ところが2人の嫁の1人ルツは姑と別れようとはせず、いっしょにベツレヘムにやってくる。エリメレク一族の裕福なボアズが落穂拾いのルツに会い、ナオミの隠れた配慮で「贖主(あがないぬし)」(=ゴーエール。子のないまま死んだ近親者の寡婦(かふ)と結婚して死者の名を継ぐ子をもうける義務を果たす者)として、ルツと結婚する。その間に生まれた男子がダビデ王の祖父オベデとなる、ということで物語は終わる。「ルツ記」は捕囚から祖国帰還した家族の再興が、擬古的な贖主の制度の見直しとモアブの女ルツの純朴な孝養から可能になったことを伝える。

吉田 泰]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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