エルサレム神殿(読み)えるされむしんでん

日本大百科全書(ニッポニカ) 「エルサレム神殿」の意味・わかりやすい解説

エルサレム神殿
えるされむしんでん

エルサレム聖書の時代(前10世紀~後1世紀)を通して3回建てられた、ユダヤ人のヤーウェ神礼拝神殿。元来遊牧民であったイスラエル民族の間では、神は天幕に住むとされ、定住農耕民的な場所的制約下にある神殿を拒否する傾向が強かった。紀元前10世紀の初め最初の神殿をソロモン王が建立し、前7世紀ヨシヤ王の宗教改革で、神殿は神の地上的臨在の唯一の場とされ、神殿における祭儀の執行が民族の宗教の中心課題となった。神殿は前587年バビロン軍によって破壊され、前516年ゼルバベルによって再建されたが、異民族との戦いで荒廃し、前1世紀末ヘロデ王によって増修築され、紀元70年ローマ軍の攻撃にあって崩壊した。この興亡の歴史は、神殿を単なる神の地上的臨在の象徴の歴史にとどめず、ユダヤ民族の政治的主権国土の象徴とし、その再建を民族国家再建の夢と希望に結び付けた。紀元7世紀以来、神殿跡にはイスラム教の岩のドームが建てられ、境内は石壁で囲われている。その西壁の一部が嘆きの壁(哭壁(こくへき))であり、失われた神殿(国家)をしのび再建を願うユダヤ人の巡礼を集めてきた壁である。

[秋輝雄]


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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「エルサレム神殿」の意味・わかりやすい解説

エルサレム神殿
エルサレムしんでん
Temple of Jerusalem

エルサレムにあるユダヤ人の神ヤハウェを祀る神殿。同一の場所にほぼ同一の結構で3回建直されているが,原型は「ソロモンの神殿」と呼ばれるものである。ダビデは,それまで用いられていた神の幕屋を恒久的神殿にする志をもっていたが,その建設は,彼が戦いで流した多くの血ゆえに禁止されていた (歴代志上 28・2~3) 。しかしダビデの望みはその子ソロモンの時代に7年半の歳月をかけて実現した (前 949完成) 。当時はイスラエル全部族の聖所であったが,王国の南北分裂後は南のユダ王国の礼拝の中心地となった。前 586年にはバビロニア王ネブカドネザル2世によって破壊されたが,捕囚からの帰還後,ゼルバベルによって再建された (前 515) 。前 20年頃,ヘロデ大王によって第3回の再建が行われ,神域は拡大された。しかし 70年,ローマ軍がエルサレムを陥れた際,再び破壊された。この神殿の広場に,有名な「嘆きの壁 (高さ 37m) 」がある。

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