ルナソサエティ(英語表記)Lunar Society of Birmingham

改訂新版 世界大百科事典 「ルナソサエティ」の意味・わかりやすい解説

ルナ・ソサエティ
Lunar Society of Birmingham

1766年にイギリスのバーミンガムで設立された私的な科学研究団体。月奇人協会,月光協会などと訳される。名称は満月に最も近い月曜の午後に会合を催したことに由来し,これは会員たちが世間から奇人(月に憑(つ)かれた人)と思われていたことと,月明りで帰宅に好つごうだったためだという。十数人から成る地域的団体であったにもかかわらず,医学,化学,博物学の一流学者と実業家が参集し,ここから新興都市の産業革命熱を背景に蒸気機関紡績機械陸運水運改良,工業用苛性ソーダ(水酸化ナトリウム)や陶器の新製法,教育方法の改革など,応用科学を中心に多くの業績が生まれた。その発端は1765年に締め金具の製造者ボールトンMatthew Boultonと医師E.ダーウィン(C. ダーウィンの祖父),教育者スモールWilliam Smallがアメリカ人フランクリンとともに催した月例談話会にある。これに陶器業者ウェッジウッド,蒸気機関の開発者ワット,化学工業の開拓者キアJames Keir,馬車緩衝装置を発明したエッジワースRichard Edgeworth,それに気体化学の先駆者J.プリーストリーが加わり,相互啓発によって多数の新くふうや理論を生みだした。しかし彼らはフランス革命とアメリカ独立を支持し,奴隷解放を力説するなど,革新的政治姿勢を示したため,地元民の反発を買い,プリーストリー邸焼打ちなどの妨害を加えられ,19世紀初頭には自然消滅した。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

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