レーザー兵器(読み)れーざーへいき(英語表記)Laser weapon

日本大百科全書(ニッポニカ) 「レーザー兵器」の意味・わかりやすい解説

レーザー兵器
れーざーへいき
Laser weapon

レーザーを応用した兵器総称で、レーザーのエネルギーを相手の破壊や機能喪失に利用する兵器と、レーザーを目標探知測距、通信などに用いる兵器とがある。前者は指向性エネルギー兵器(DEW=Directed Energy Weapon)の一種で、アメリカの戦略防衛構想(SDI)で注目を浴びたが、大出力のレーザーを安定して発振させる手段や遠距離照準などの技術的困難があり、現在は開発も下火となっている。しかしアメリカ空軍では、ボーイング747旅客機に化学レーザーを搭載して、上昇段階の弾道ミサイルを撃墜するABL(Airborne Laser)を開発中で、2004年に空中におけるレーザー照射の実験に成功している。これとは別に、可視や近赤外のレーザーで人間の目をねらい、一時的あるいは永久的に視力を奪う目つぶしレーザーもあるが、残虐な兵器として国際的に使用を禁止されている。

 一方レーザーのエネルギーを破壊以外に利用する兵器としては、目標の探知や識別に使うレーザー・レーダー(光波レーダー、lidar=light-wave radar)、光の往復から距離を測定するレーザー測距機(laser rangefinder)、光を目標に照射して味方にその位置を知らせるレーザー目標指示機などがある。レーザー誘導爆弾は、地上あるいは空中からレーザーを目標に照射し、その反射をたどって命中する仕組みである。

[野木恵一]


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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「レーザー兵器」の意味・わかりやすい解説

レーザー兵器
レーザーへいき
laser weapon

レーザー光を通信,探知測定用および殺傷破壊用に利用する兵器。通信用としては,衛星を含む直視範囲の大容量通信,導光線を使用する艦内,機内および陸上固定位置間の大容量・機密・軽量通信用として大きな有用性と将来性をもっている。測定用としては衛星を含む直視範囲の精密測定用,特に戦車用に重用されている。水中では減衰が大きく対潜用としては実用化されていない。殺傷破壊用としては,1964年にレーザー銃が試作され,人間を一時盲目とし,数十mの距離で衣服を焦がすことが可能であった。最近の大出力レーザーの出現に伴って,次のようなレーザー放射兵器が開発され実用化されようとしている。 (1) 艦船用対艦ミサイル防御兵器,爆撃機用対ミサイル防御兵器,車両用対ミサイル防御兵器,(2) 衛星用対衛星機能破壊兵器,(3) 弾道ミサイル破壊兵器など。

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