ロイス(読み)ろいす(英語表記)Josiah Royce

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ロイス」の意味・わかりやすい解説

ロイス
ろいす
Josiah Royce
(1855―1916)

アメリカの哲学者。カリフォルニア生まれ。カリフォルニア大学に学び、ハーバード大学助教授、ついで教授となって、傾向の異なるW・ジェームズとともに同大学哲学科の黄金時代を築いた。ロイスは結局、絶対的プラグマティストだと自称して、絶対的経験を要請し、探究を行うためには内的な意味と目的をもった絶対的な観念が必要だと考えた。『忠誠の哲学』(1908)はそのよい実例で、新渡戸稲造(にとべいなぞう)に準拠して武士道に高い評価を与えた。このような態度は、エドワーズエマソンになかった論理的体系を初めてアメリカ観念論に与えただけでなく、数学基礎論の研究を通じてフレーゲラッセルなどの近代論理学につながる面がある。ほかに『現代哲学の精神』(1892)、『世界個人』(1899~1901)、『キリスト教問題』(1913)、『現代観念論講義』(1919)などがある。さらに余技として創作才能があり、たとえば『オークフィールドMの宿根』(1887)と題した小説を前記W・ジェームズに献じている。

[鵜木奎治郎 2015年10月20日]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ロイス」の意味・わかりやすい解説

ロイス
Royce, Josiah

[生]1855.11.20. カリフォルニア,グラスバレー
[没]1916.9.14. ケンブリッジ
アメリカの哲学者,教育家。カリフォルニア大学卒業後,ライプチヒ,ゲッティンゲン,ジョンズ・ホプキンズ大学で哲学を学び,1885年ハーバード大学哲学助教授,92年教授。ドイツ観念論,特に同時代のイギリス新ヘーゲル学派の立場から,哲学のみならず,文芸批評や歴史学の分野にも貢献。同時代のプラグマティズムに対しては,それが観念を人間の意志実現の道具とみなす点では賛成したが,その観念を相対的なものであるとみなす点を批判した。その相対性を包摂するものとして絶対意志を措定し,人間の個別的意志はその現れであり,人間は絶対意志を意識することによってのみ社会的に正しく生きうると主張し,この自己の立場を「絶対的プラグマティズム」と呼んだ。主著『現代哲学の精髄』 The Spirit of Modern Philosophy (1892) ,『世界と個人』 The World and the Individual (2巻,1900~01) ,『キリスト教の問題』 The Problem of Christianity (13) 。

ロイス
Ruysch, Frederik

[生]1638.3.23. ハーグ
[没]1731.2.22. アムステルダム
オランダの解剖学者。ライデン大学に学び,1667年アムステルダム大学外科学講師,68年解剖学および外科学教授,85年植物学教授。死体の血管に着色した防腐液を注入して,防腐と,脈管の分布を検査する方法を創始し,みごとな解剖標本をつくった。歯牙,冠状動脈の分枝,男女の骨盤の差などについて,正確な記載を残している。アムステルダム市の産科医,裁判医を兼ね,学識は必ずしも深遠でなかったが,常人をしのぐ精力と器用さによって,「ヤマネコの目と妖魔の手をもった男」と評された。

ロイス
Ruysch(Ruisch; Ruijsch), Rachel

[生]1664. アムステルダム
[没]1750.10.12. アムステルダム
オランダの女性静物画家。 W.アールストの弟子。 1701年ハーグの画家組合に肖像画家である夫 J.プールとともに登録。 1706年ジュッセルドルフの宮廷画家となった。特に花の画家として知られる。

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