ロイズ(読み)ろいず(英語表記)Lloyd's

翻訳|Lloyd's

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ロイズ」の意味・わかりやすい解説

ロイズ
ろいず
Lloyd's

イギリス独特の保険機構で、世界保険市場におけるもっとも強力な個人保険業者の集団。17世紀末ごろロンドンのエドワード・ロイドEdward Lloyd(1648―1713)経営のコーヒー店には船主荷主海上保険者など海事関係者が集まり、そこで海上保険取引が盛んに行われていたが、1713年にロイドが死亡してのち、そこに出入りしていた個人保険業者たちがつくったグループがロイズである。1769年にコーヒー店から独立した新ロイズが結成され、現代のロイズの始まりとなった。新ロイズは1871年にコーポレーション・オブ・ロイズCorporation of Lloyd,sという法人に組織を改めた。その後海上保険以外の保険分野にも活動領域を広げ、今日では世界保険市場の中心となっている。

 保険引受けはロイズの会員たる個人保険業者が行い、ロイズ法人自身は契約引受けには関係しない。法人は会員に取引を行う場所を提供するほか、損害査定や情報の収集伝達などのサービスを提供し、会員の利益に奉仕している。会員たる個人保険業者は大小いくつかのシンジケートを結成し、各シンジケートごとに保険引受代理人underwriting agentを置き、保険業務全般を彼に委託し、自分自身は単に保険証券に名を連ねるネームnameとしての地位にたつ。保険引受代理人の引受業務は、直接顧客と交渉して行われるのではなく、ロイズに出入りする資格をもつロイズ・ブローカーがもたらす契約を引き受ける。しかし、保険引受代理人は保険契約の当事者として保険証券に署名するのではなく、それはあくまでネームとしての個人保険業者が行う。そして、個人保険業者は、シンジケートの構成メンバーとして、それに結合しているとはいえ、自分自身の引受分に対して無限責任を負うだけで、他のメンバーと連帯して自分以外の引受分の責任を負うことはない。これが、いわゆる個人責任の原則であり、ロイズ創成期より今日に至るまで伝統的に守られてきたもっとも重要な原則、すなわち独立責任制と無限責任制である。

[金子卓治]

『木村栄一著『ロイズ・オブ・ロンドン――知られざる世界最大の保険市場』(1985・日本経済新聞社)』

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ロイズ」の意味・わかりやすい解説

ロイズ
Lloyd's

イギリスの個人保険業者の集団で,英国保険市場において約3分の1の営業量 (保険料収入による) をもっている。 17世紀中頃ロンドンに開かれた E.ロイドのコーヒー店に起源を発し,当時海運貿易業者,個人保険業者がこのコーヒー店をたまり場として情報交換,取引などを行なっていたことから海上保険取引の一つの中心として栄え,ここに集る海上保険引受人をロイズの保険引受人と呼ぶようになった。その後独立してロイズ社団となり,1871年ロイズ保険組合 The Corporation of Lloyd'sとして法人となった。しかし保険の引受けは引受会員 under writing memberと呼ばれる個々の会員の勘定と危険負担において業務は営まれるもので,保険組合自体は法人格はもつものの保険を引受けるものではなく,単にこれらメンバーに取引を行う建物を提供し,海事に関する情報資料の収集,配付を業とするにすぎない。保険を引受けるメンバーはいくつかのシンジケートを結成し,各シンジケートごとに引受代理人を任命して保険引受業務を行わせている。今日のロイズ保険組合はイギリス保険市場だけでなく,世界保険市場における中心的存在になっており,その引受ける保険の種類も海上保険だけでなく,火災保険から新種保険の分野にいたるまで広範に及んでいる。アメリカにも Lloyd'sを称する保険団体があるが,一般に Lloyd'sといえばロンドンのロイズをさす。

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