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海上保険 かいじょうほけんmarine insurance

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

海上保険
かいじょうほけん
marine insurance

航海における事故によって発生した損害 (海損) を填補する保険。航海によって生じる沈没座礁座州火災,衝突などの海上危険だけでなく,海賊,強盗,投荷,襲撃,拿捕,抑留や船長および船員の悪行,暴動,ストライキなどによってこうむった損害など航海上の種々の危険を包括的に引受けるもので,火災保険盗難保険などのように単一もしくは少数の危険を引受けるものに比べて著しい特徴がある (ただしイギリス,アメリカの海上保険では包括的な海上危険のなかで特定のものだけを引受ける) 。海上保険には,(1) 船舶自体に生じた損害の填補を行う船舶保険 (建造中の船舶については建造保険) ,(2) 積荷,貨物,商品に生じた損害を填補する積荷保険 (貨物海上保険) ,(3) 運送品が事故によって滅失したため,着払い運送賃が支払われない場合にそなえての運送賃保険,(4) 運送賃によって回収されるはずの燃料,潤滑油,食料品などの船舶の運行に要する費用 (船費) が,運送賃の収得が妨げられたため無駄払いとなったことによる損害を填補する船費保険 (運送賃保険のなかに含まれていることが多い) などがある。海上保険はギリシア,ローマにおいて行われていた冒険貸借からの転化とみてよく,その歴史は火災保険とともに損害保険のなかで最も古く,海運業者や貿易商人を対象にして行われる商人の保険 (企業保険) として発展してきた。船舶,積荷が海上を盛んに移動し取引が行われることから国際性に富んだ保険であり,危険の平均・分散をはかるため再保険機構が国際的に高度に発達している。

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デジタル大辞泉の解説

かいじょう‐ほけん〔カイジヤウ‐〕【海上保険】

船舶の沈没・座礁・衝突・火災・盗難など、航海に関する事故によって船舶・積み荷に生じる損害の塡補(てんぽ)を目的とする損害保険。

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百科事典マイペディアの解説

海上保険【かいじょうほけん】

航海に関する事故によって船舶またはその貨物に生ずる損害を填補(てんぽ)する損害保険。船舶保険貨物保険がある。浸水,沈没,衝突,座礁,火災,爆発,地震,海賊,拿捕(だほ),船員の悪行,同盟罷業(ひぎょう)などの危険を担保する。
→関連項目委付共同海損船級損害保険保険

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保険基礎用語集の解説

海上保険

沈没、火災、座礁、座州、転覆、衝突その他の海上危険によって保険の目的に生ずる損害をてん補する保険を指します。船舶保険と貨物海上保険とに大別されます。

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世界大百科事典 第2版の解説

かいじょうほけん【海上保険 marine insurance】

航海に関する事故によって生ずる損害を塡補(てんポ)する損害保険。船舶のほか,船舶の属具・船費・用船料・運賃などを対象とする船舶保険と,積荷のほか諸掛,希望利益,運賃などを対象とする積荷保険(貨物海上保険ともいう)とに大別される。
[歴史]
 海上保険の歴史は他の保険に比べはるかに古く,各種の現代的保険の母体といわれている。それがいつどうして発生したか明らかでないが,ギリシア・ローマ時代に始まり中世地中海地方でさかんに行われていた冒険貸借がいろいろな変遷をたどり,今日の海上保険となったとみる説が有力である。

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大辞林 第三版の解説

かいじょうほけん【海上保険】

損害保険の一種。航海上の事故によって生ずる船舶・積み荷などの損害を塡補てんぽするための保険。座礁・衝突・沈没のほか、火災・海賊などによる損害の塡補も行う。 → 運送保険

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

海上保険
かいじょうほけん

航海に関する事故によって生ずる損害の填補(てんぽ)を目的とする保険。[金子卓治]

沿革

海上保険の歴史は古く、その萌芽(ほうが)は古代ローマ時代にさかのぼることができるが、14世紀に北部イタリアの地中海沿岸諸都市において、それまでの海事慣行であった冒険貸借より転化して海上保険契約が結ばれるようになったのが現在のような海上保険の始まりとされている。1350年にパレルモ、1379年にピサ、1385年にフィレンツェ、1395年にベネチアで契約されたものは、いずれも今日の保険契約の形をとっている。地中海商業の発展に伴いイタリア商人とくにロンバルディア商人の活動が活発となり、その勢力圏の拡大とともに、海上保険もイタリアからマルセイユ、バルセロナなど地中海沿岸の港を経てリスボン、ボルドー、ブリュージュなど北大西洋岸の商業都市に伝えられ、やがてアントウェルペン(アントワープ)がかつてのイタリアの都市にかわって貿易および海上保険の中心地となるに至った。海上保険はさらにアントウェルペンから、北はアムステルダム、ハンブルクへ、西はロンドンへと伝えられた。そして17世紀以降は、その名もロンバルディアに由来するロンドンのロンバード街を中心として盛んに行われ、さらにイギリスが貿易、海運の中心的市場になるにおよんで、イギリスの海上保険は世界各国の模範となり、指導的地位を確保するようになった。
 わが国においても、慶長(けいちょう)・元和(げんな)(1596~1624)ごろの朱印船貿易では「抛銀(なげがね)」という冒険貸借に似たものが行われており、元禄(げんろく)時代(1688~1704)になると、海上請負と称して、廻船(かいせん)問屋や船主が積み荷の運送中に生じた損害を負担するかわりに高い運賃をとることが行われていたが、いずれも独立した保険制度として発展することはなく、近代的な海上保険制度は明治維新後に外国から移入された。1859年(安政6)に神奈川、長崎、箱館(はこだて)の3港が開港されると、外国の貿易会社などとともに保険会社もこれらの港に進出してきて、主として外国会社を相手に営業を始め、明治時代に入ると、日本人を相手とする海上保険も取り扱うようになった。73年(明治6)には、北海道の開発を目的とした保任社が北海道開拓使の特許によって設立され、函館(はこだて)―東京―大阪間の貨物の運送を行うとともに、それに関連する荷為替(にがわせ)と海上請負業務を行ったが、採算がとれず、翌年4月には解散してしまった。77年になると、第一国立銀行が同行の本支店間荷為替の物品に限り「海上受合(うけあい)」業務を始め、79年には、渋沢栄一頭取(とうどり)が旧大名華族の資金を活用するために三菱(みつびし)の岩崎弥太郎の参加を得て東京海上保険会社(のちの東京海上火災保険、現東京海上日動火災保険)を創立し、海上受合業務を同社に譲渡した。この東京海上保険会社がわが国最初の保険会社である。[金子卓治]

機能と種類

海上保険は、沈没、座礁、座州(砂や泥の上に船が乗り上げること)、火災、衝突その他の海上危険によって生ずる損害の填補を目的とする保険である。たとえば、貨物を積載した船舶が航海中に座礁して、船舶や貨物が滅失・損傷すれば、船舶や貨物の所有者は当然に損害を被る。そして損害はこの船舶や貨物自体の物的損害にとどまらず、船主は座礁のために貨物の運送が完了しなければ、荷主に運送賃を請求できず、その結果、その航海のために支出した燃料、食料、消耗品などの船費も回収できないことになる。荷主もまた貨物が無事目的地に到達したならば得られたはずの希望利益を失うという損害を被ることになる。このほか、海上危険が発生すれば、船主や荷主は損害の防止・軽減のために損害防止費用を支出しなければならなくなるであろうし、船主は自船が他船と衝突し、相手船とその貨物に損害を与えれば、衝突損害賠償責任を負担することになる。このように海上危険の発生によって生ずる損害には、船舶や貨物の物的損害のほかに、船主の運送賃請求権のような権利、船費のような回収を予定した支出、荷主の希望利益のような期待した収益などの積極財産に関する損害と、損害防止費用のような費用の支出や船主の衝突損害賠償責任のような責任の負担などの消極財産に関する損害とがある。海上危険の発生によって生ずるこのような各種の損害を填補するのが海上保険である。
 海上保険は、海上危険の発生の主体、すなわち、保険の目的によって船舶保険と貨物保険とに大別される。[金子卓治]
船舶保険
保険の目的である船舶は複雑な建造物で、船体のほかに、機関、帆柱、操舵(そうだ)器などがあるが、これらは当然に船舶の一部となる。また、被保険者の所有する物であれば、船舶使用の目的のために船舶内にあるすべての属具、燃料、食料その他の消耗品も船舶のなかに含めている。船舶の保険価額は、商法では保険責任開始のときにおける価額とし、保険期間の終了までこの価額が契約当事者双方を拘束する、いわゆる保険価額不変更の擬制が行われている。しかし、保険責任開始のときの価額がいくらであったかについての争いをなくすために、実際には、保険契約締結時に保険契約者と保険者との間で評価された価額、すなわち、協定保険価額が使用されている。船舶保険では保険金額を協定保険価額と同額とし、全部保険とするのが普通である。また、全損となった場合を除き、保険会社が保険金を支払っても、保険金額が減ることはなく、1回の事故ごとに保険金額を限度として何回でも保険金を支払う。保険期間は多くは1年間の期間保険であるが、短期間の契約も、航海保険として一つの航海の危険を付保することもできる。船舶保険の保険条件には、一般的契約内容を定めた船舶保険普通約款と、損害填補の範囲を定めた第1種から第5種までの特別約款とがあり、普通約款の上に特別約款から一つを選んで付加して引き受けられる。[金子卓治]
貨物保険
売買契約の対象たる貨物は、陸・海・空の運送経路を経て運送される関係上、わが国の保険市場で引き受けられている貨物保険にも、主として貨物の陸上運送中の危険に備える運送保険、主として海上運送中の危険に備える貨物海上保険(積荷保険ともいう)、および主として航空運送中の危険に備える航空貨物保険の3種類がある。このうち、貨物海上保険はさらに、国際間の運送貨物(主として輸出入貨物)を対象とする外航貨物海上保険と、日本の国内沿岸の運送貨物を対象とする内航貨物海上保険とに分類される。貨物保険中、内航貨物海上保険および運送保険と、外航貨物海上保険との間に、前二者が国内取引に利用され、後者が国際取引用に利用されることから生ずる、主として引受方式や準拠法に関する種々の相違が存在する。すなわち、内航貨物海上保険と運送保険では、保険契約はすべて円貨建てで行い、保険証券あるいは保険引受証も和文のものが発行される。そして、保険約款に規定のない事項については日本の法令に従う。さらに保険条件および保険料率は原則上、損害保険料率算定会の決定したものによっている。これに対して、外航貨物海上保険は、保険契約を原則として外貨建てで行い、保険証券も英文のものが発行される。そして、保険金請求に対する保険会社の責任の有無および精算については、イギリスの法律および慣習に準拠する。なお、イギリスでは1982年からロンドン保険業者協会の新しい保険証券の様式、新しい保険約款が使用されることになり、わが国においてもこれに倣って新しいものに切り替えられつつある。[金子卓治]
『亀井利明著『海上保険概論』改訂版(1996・成山堂書店) ▽近見正彦著『海上保険史研究――14・5世紀地中海時代における海上保険条例と同契約法理』(1997・有斐閣) ▽加藤修著『国際貨物海上保険実務』3訂版(1997・成山堂書店) ▽加藤修著『貿易貨物海上保険改革』(1998・白桃書房)』

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世界大百科事典内の海上保険の言及

【損害保険】より

…損害保険として日本の商法が定めているのは偶然な事故により被った損害が塡補される保険で,火災保険運送保険海上保険の3種類であるが,今日では各種の新しい保険が行われるようになっている。損害保険は多義の用語であるが,生命保険以外の保険ないし,保険のうち損害保険会社が営業するものの意味で用いられることが多い。…

【保険】より

…この機関が保険者である。
【保険の歴史】

[海上保険]
今日の保険の出発点は中世イタリア都市で行われた海上保険にあるとみるのが通説である。もっとも,保険という思考の原始的萌芽(危険分散,助け合い)や,保険に似た仕組みは,かなり古い時代までさかのぼって見いだすことができる。…

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