日本大百科全書(ニッポニカ) 「ロッテルダム条約」の意味・わかりやすい解説
ロッテルダム条約
ろってるだむじょうやく
Rotterdam Convention
有害化学物質のPIC(Prior Informed Consent=情報提供に基づく事前同意)に関する条約。正式名称は「国際貿易の対象となる特定の有害な化学物質および駆除剤についての事前の情報に基づく同意の手続に関するロッテルダム条約Rotterdam Convention on the Prior Informed Consent Procedure for Certain Hazardous Chemicals and Pesticides in International Trade」であり、PIC条約ともよばれる。先進各国において使用禁止となっている農薬などが開発途上国へ輸出され、使用されている現状に対処するため、1998年9月にオランダのロッテルダムで採択、署名された。
この条約は、消費者および労働者を含む人類の健康とともに環境を保護することを目的としており、入用とする化学物質と管理不能な化学物質を輸入国が決定できるようにするために、PIC制度が定められている。この条約の対象とされている物質は、2,4,5-T、アルドリン、カプタホル、クロルデン、DDT、EDB(1,2-ジブロモエタン)、HCH(ヘキサクロロシクロヘキサン)、HCB(ヘキサクロロベンゼン)、水銀化合物、リンデン、パラチオンなどの駆除剤24種、メタミドホス、ホスファミドン、メチルパラチオンなど著しく有害な駆除用製剤4種、また、アスベスト(石綿)5種を含む、PBB(ポリ臭化ビフェニル)、PCB(ポリ塩化ビフェニル)、PCT(ポリ塩化ターフェニル)など11種の工業用化学物質が付属書Ⅲに掲載されている。
輸出国は、自国で禁止または厳格制限されている化学物質の輸出について通報する義務がある。この通報は、最初の輸出の前に行われなければならず、その後も毎年、最初の輸出について繰り返さなければならない。また締約国は、条約上必要とされる措置を国内で実施する義務を有し、商業輸出および輸出業者を規制管理するための取締体制を整備しなければならない。
[磯崎博司]