ロビイング(読み)ろびいんぐ(英語表記)lobbying

翻訳|lobbying

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ロビイング」の意味・わかりやすい解説

ロビイング
ろびいんぐ
lobbying

圧力団体の利益のために、議会立法の促進や阻止にあたり、かつ、それに役だつ影響力を行使する院外活動のこと。ロビー活動ともいう。もともとアメリカの議会用語であるが、最近その他の国でも用いられている。ロビーとはもともと議員が院外者と面会する控室のことで、運動員(ロビイスト)がおもにここを舞台として活動したことから、このことばが生まれた。ロビイストは、首府ワシントンや州や地方政府の所在地に常駐し、議事手続議院規則、法案審議状況についてのその豊富な知識を駆使して、議員ならびに彼らの選挙区の有力者に硬軟両様の諸種の圧力手段を行使する。ワシントン駐在のロビイスト数は1944年に2万人といわれたが、その数は現在もそれを下回らないであろう。ロビイストの職業は弁護士が多く、前議員も有力な資格者である。彼らの活動は、しばしば政治的腐敗を生み出したため、1946年「連邦ロビイング統制法」が制定され、ロビイストは、その氏名、活動等を上下両院事務局に登録することを義務づけられた。彼らの活動方式としては、直接議会に働きかける直接ロビイングと、世論に働きかけ、動員することによって間接的に立法に影響を与える間接ロビイングがある。大企業などでは、企業内に政治活動プログラムを設置し、草の根運動の展開や協調戦線coalitionの結成が目ざされる。また最近の傾向としては、議会以外の行政府裁判所、とくに行政府がロビイングの重要な対象となってきている。

田口富久治

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ロビイング」の意味・わかりやすい解説

ロビイング
lobbying

圧力団体 (→プレッシャー・グループ ) が政策決定に影響を与えようとする活動。おもにアメリカでの実態をさす。ロビイスト lobbyistはこの活動の直接のにない手。圧力団体の代表が議会のロビーで議員を説得したことに由来するこの活動は,今日法案審議過程だけでなく立法,行政,司法を含む政治過程全体に向けられ,その戦術も有力議員への個別の説得から関係者全員への組織的な働きかけ,選挙民を動員する草の根ロビイングまで法が許す手段のすべてにわたる。そのためロビイストも法律家から PRコンサルタント,世論調査業,元官僚,政治家,企業・団体の関係部門スタッフなどその肩書はさまざまである。もっともこのアメリカの状況は,日本の官僚制やヨーロッパの政党・団体に匹敵する政策立案の心臓部が欠如していることにもよる。ロビイストと議員の癒着に向けられる批判の目もきびしくなり,1995年上院では倫理委員会による規則が全会一致で採択された。一方で,国際化が進むなか,ワシントン D.C.では日本ロビイと呼ばれる集団が急成長,東京でも欧米諸国の在日関係機関などに代表される外国ロビイの存在が注目されはじめている。 (→ロビイング規制法 )

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