日本大百科全書(ニッポニカ) 「ロビンソン・クルーソー」の意味・わかりやすい解説
ロビンソン・クルーソー
ろびんそんくるーそー
The Life and Strange Surprising Adventures of Robinson Crusoe
イギリスの作家デフォーの長編小説。原題は『ロビンソン・クルーソーの生涯と不思議な驚くべき冒険』。1719年刊。同年に続編が出た。ヨーク生まれのクルーソーは父の忠告を振り切って冒険航海に出る。出航まもなく大嵐(おおあらし)が前途を予告するように彼を襲うが、それにも懲りないでついに難破し、28年にわたって孤島で生活することになるが、人を寄せ付けない自然を、残されたわずかの道具を用いて住みやすいように改造し、家をつくり穀物を栽培してたくましく生き抜く話が中心となっている。これまでのロマンス風の散文物語と異なり、平易な文章を駆使して写実的に描くところに特色があり、苦難に支配されずに着実に生活を築いてゆく当時のイギリス市民の生き方がよく出ていて、イギリス小説成立期の重要作品である。キリスト教寓話(ぐうわ)としての特色も最近では注目されている。
[岡 照雄]
『平井正穂訳『ロビンソン・クルーソー』全2冊(岩波文庫)』▽『吉田健一訳『ロビンソン漂流記』(新潮文庫)』