日本大百科全書(ニッポニカ) 「ロホナー」の意味・わかりやすい解説
ロホナー
ろほなー
Stefan Lochner
(1400ころ―1451)
ドイツの画家。ボーデン湖畔メーアスブルクに生まれたと推定される。1430年以来ケルンに住み、ここで市参事会員として生涯を終えた。彼は繊細優美なケルン画派を代表する画家で、この画派で名前の伝わっている唯一の存在でもある。彼の表現分野は広く、細密画『ダルムシュタットの祈祷書(きとうしょ)』からケルンのドームを飾る大祭壇画に及んでいる。もともとケルン画派の技法はフランドル絵画に影響されてモダンであるが、同時に「つぼみのように初々しい」と形容される聖母の顔に象徴されるように、敬虔(けいけん)な宗教感情の表出に特色がある。彼の場合もフランドルの影響による生彩ある表情や精密なディテール描写もさることながら、名作『バラの籬(まがき)のマドンナ』(ケルン、ワルラフ‐リヒャルツ美術館)にみるように、魂の深い安らぎをたたえた聖母や天使像に神秘主義的ともいえる宗教感情が表現されている。
[野村太郎]