ランブール(読み)らんぶーる(英語表記)Georges Limbour

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ランブール」の意味・わかりやすい解説

ランブール(兄弟)
らんぶーる
Les frères de Limbourg

14世紀末から15世紀初頭にかけてフランスで活躍したフランドル出身の細密画家。ポールPaul(Pol)、ヘルマンHermann(Hermant)、およびヤンJan(Jehannequin)の3兄弟であるが、伝記的事実は三人とも未詳。ベルギーのランブール地方の生まれで、彫刻家であった父親の死後ディジョン叔父の画家マルエルJean Malouel(?―1415/1419)の感化を受けた。ポールとヤンは1402年以来ブルゴーニュフィリップ(大胆公)に仕えて聖書の挿絵を描き、遅くとも1411年以降、3人はそろってブールジュのベリー公の宮廷画家となって、主作品『うるわしき時祷書(じとうしょ)』(メトロポリタン美術館分館クロイスターズ)、『ベリー公のいとも豪華なる時祷書』(シャンティイコンデ美術館)を制作した。

 この後のほうの作品は、兄弟が1416年に疫病ペスト?)で相次いで死去したため完成するに至らず、約70年後ジャン・コロンブ・ド・ブールジュJean Colombe de Bourgesによって仕上げられたが、兄弟の筆になる暦の部分がもっとも高く評価される。これは1年の12か月を通じて推移する自然の変化と、それに即した人間生活を細密に描写した連作である。兄弟は綿密な観察と写実的手法によって、自然と人間とを分離することのできない統一的なイメージとして画面に表している。たとえば貴族宴席を描いた「1月」では、ルネサンス的な意味での「室内画」を、田園風景を描いた「2月」では、前景・中景・遠景の区別のはっきりした雪景色を見ることができる。パースペクティブに関するこの種の配慮にも新時代の到来が予告されている。

[野村太郎]



ランブール
らんぶーる
Georges Limbour
(1900―1970)

フランスの作家、詩人。クールブボアに生まれる。1921年にクルベルらとともに同人誌『アバンチュール』を創刊してブルトンに注目され、初期シュルレアリスム運動に加わる。詩集『沈む太陽』(1924)を発表してのち、世界各地を旅する。短編小説集『名高い白馬』(1930)以後作家として再出発し、異国情緒と文明批判を特徴とする多くの小説を発表する。代表作は38年出版の『バニラの木』Les Vanilliersであろう。

[巖谷國士]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ランブール」の意味・わかりやすい解説

ランブール
Limbourg

オランダ生れの画家3兄弟。ポール Pol,ヘルマン Herman,ジャンヌカン Jehanequinの3人で,ともに生没年未詳であるが,1400~16年頃にフランスで細密画家として活躍した。彫刻家アーノルド・ファン・ランブールの息子で,ブルゴーニュ公の宮廷画家 J.マルエルの甥であるため,マルエルと呼ばれることもある。パリの金銀細工師のもとで修業し,02年にポールとジャンヌカンはブルゴーニュのフィリップ (豪胆公) に仕え,11年頃には3人ともブールジュのベリー公の宮廷画家となった。はなやかな洗練された彩色写本の絵を描いた。作品は『ベリー公のいとも豪華なる時祷書』 (1413~16,未完のため 85年に J.コロンブスにより完成。コンデ美術館) 。

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