改訂新版 世界大百科事典 「ロレスターン」の意味・わかりやすい解説
ロレスターン
Lorestān
ロル族の居住するイラン南西部の地域名。現在,同名の行政州がある。州都はホッラマーバードKhorramābād。16世紀以前においてはロル族からバフティヤーリー族,クーフギールーエ族,ママサニー族が分かれて独立していなかったので,ロレスターンは今よりも広い地域を指していた。北はケルマンシャーとハマダーンを結ぶ線,東はイスファハーン,ファールスの境界線,南はフージスターン平原,西はイラク国境に囲まれるザーグロス山脈一帯がそれである。地形は平均標高1600mの山脈が並走し,深い谷によって刻まれている。鉱物資源が豊かであるが,遊牧が一般的な生活形態である。この地域の歴史への登場は古く,前18世紀半ばから前1171年までバビロニアを支配していたカッシート人の故地はこの地域である。また前8~前7世紀のいわゆるルリスタン青銅器は,ここからの出土品である。近年は縦貫鉄道と道路の開通によってテヘランとペルシア湾を結ぶ重要な交通の要衝になっている。
執筆者:坂本 勉
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