ローゼンバーグ(英語表記)Harold Rosenberg

改訂新版 世界大百科事典 「ローゼンバーグ」の意味・わかりやすい解説

ローゼンバーグ
Harold Rosenberg
生没年:1906-78

アメリカの美術批評家。第2次大戦直後のアメリカに起こった抽象絵画を〈アクション・ペインティング〉と命名し,これをダイナミックな論理で分析したことで知られる。J.ポロック,W.デ・クーニングらの画家にとって〈キャンバスは“表現する”場であるよりも,むしろ行為(アクト)する場としての闘技場に見えはじめた〉とし,〈絵ではなく事件〉を画面上に生起させた,生(なま)の現在とアクションが,アメリカ美術をヨーロッパ美術の伝統から解放したと説いた。戦後におけるアメリカ美術の重要性を最初に主張した功績は大きい。画期的論文〈アメリカのアクション・ペインター〉を収めた《新しいものの伝統》のほか,《アーシル・ゴーキー》《不安な物体》《美術作品とパッケージ》などの著作がある。またその活動は文学政治など広い分野におよび,ニューレフト立場からも多くの著作を残した。
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百科事典マイペディア 「ローゼンバーグ」の意味・わかりやすい解説

ローゼンバーグ

米国の文芸・美術評論家。ニューヨーク生れ。1930年代から柔軟な左翼的立場で芸術一般を論じたが,第2次大戦直後のアメリカに起こったJ.ポロックやW.デ・クーニングらの抽象絵画を〈アクション・ペインティング〉と命名し,ダイナミックな論理で分析したことで知られる。週刊誌《ニューヨーカー》で時流にまどわされない美術展評を書き続けた。戦後におけるアメリカ美術の重要性を最初に主張した功績は大きく,画期的な論文〈アメリカのアクション・ペインター〉を収めた《新しいものの伝統》(1959年)や,《不安な物体》(1966年),《荒野は壺にのみこまれた》(1969年)などの著作がある。美術評論のほかにも,文学,政治などの広い分野で活躍,著書も多い。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ローゼンバーグ」の意味・わかりやすい解説

ローゼンバーグ
Rosenberg, Isaac

[生]1890.11.25. ブリストル
[没]1918.4.19.
イギリス詩人将来を嘱望されたが,第1次世界大戦中フランス戦線で戦死。処女詩集は『夜と昼』 Night and Day (1912) 。死後 R.ビニョンの回想録を付した『詩集』 Poems (22) ,S.サスーンの序文付きで手紙などを含む『全詩集』 Collected Poems (37) が出版された。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ローゼンバーグ」の意味・わかりやすい解説

ローゼンバーグ
ろーぜんばーぐ
Isaac Rosenberg
(1890―1918)

イギリスの詩人。ユダヤ系ロシア移民を両親にブリストルで生まれ、幼時ロンドンに移る。画家として身をたてるためスレード美術学校に入学、かたわら詩作を続け、詩集『夜と昼』(1912)でエズラ・パウンドらに認められた。第一次世界大戦勃発(ぼっぱつ)と同時に召集され、フランス戦線で戦死した。言語実験に強い関心をもち、未完に終わったが、従軍中の「塹壕詩(ざんごうし)」は力感に満ち、その詩才が惜しまれる。

[上田和夫]

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世界大百科事典(旧版)内のローゼンバーグの言及

【アクション・ペインティング】より

…第2次大戦後10年間あまりアメリカで主流となった絵画の傾向で,ヨーロッパのアンフォルメル(抒情的抽象)に対応する。批評家ローゼンバーグが1952年の論文で初めて使った言葉。もともと,床に大きな画布をしいて中に入り込み文字どおりアクションによって描くポロックに由来し,狭義では彼の絵画のみに限定して用いられる。…

※「ローゼンバーグ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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