改訂新版 世界大百科事典 「マシフサントラル」の意味・わかりやすい解説
マシフ・サントラル
Massif central
フランス中部から南部にかけて分布する山地,高原。中央山地,中央高地(プラトー・サントラル)とも呼ばれ,フランス全土の6分の1(約8万5000km2)を占める。北はパリ盆地,西はアキテーヌ盆地に向かい,東はローヌ川とその支流ソーヌ川に境され,南はラングドック平野に面する。山地の地質は古く,古生代のヘルシニア褶曲運動をうけ,中生代の準平原化により小起伏となったが,第三紀初め以降隆起し,断層運動や火山活動をうけている。地形的には,オーベルニュ火山地帯(最高峰はピュイ・ド・サンシーで標高1886m)や南東縁のブレ山地(メゼン山,1754m),セベンヌ山地(ロゼール山,1702m)などで山地をなす。全体として高原や丘陵が広く,山は高くないが広く深いことに特色があり,人口密度も低い。セベンヌ山地に源流をもち北流するロアール川とアリエ川の谷には例外的に平野が発達している。それ以外のおもな河川は山地内を西流してアキテーヌ盆地を通り大西洋に注ぐ。気候は高度の影響をうけて一般に寒さがきびしく,西部の海洋性,東部の半大陸性,南部の地中海性の3地域に分かれる。降水量は西部と北部で豊かで,森林植生は山地高度が低くなるにつれて針葉樹からブナ,カシワ林にかわる。耕作地や牧場のために森林は早くから開拓され,今日ではあまり広くない。19世紀以来,典型的な人口流出地域であり,はじめは季節的,一時的な出稼ぎであったが,現在では絶対的な人口減少地域となった。北部盆地(リマーニュ)では農業,山地(リムーザンやセベンヌ)では牧畜業,山地周辺では工業が行われている。近年ダム建設による水力発電や観光なども盛んである。
→オーベルニュ
執筆者:米倉 伸之
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報