わが青春に悔なし(読み)わがせいしゅんにくいなし

改訂新版 世界大百科事典 「わが青春に悔なし」の意味・わかりやすい解説

わが青春に悔なし (わがせいしゅんにくいなし)

1946年製作の東宝映画。黒沢明監督の戦後第1作(《虎の尾を踏む男達》が終戦直後に完成していたが,占領軍の検閲によって公開を保留され,1952年まで公開されなかった)。木下恵介監督の戦後第1作《大曾根家の朝》(1946)とともに戦後の日本の〈民主主義映画〉のさきがけをなした名作で,脚本は《大曾根家の朝》の脚本も書いている戦前からの社会主義リアリズムの劇作家久板(ひさいた)栄二郎である。

 言論と思想の自由が弾圧された京大の〈滝川事件〉と国際スパイ事件と騒がれた〈ゾルゲ事件〉をモデルにして,苦境の中で〈自我〉に目覚め〈自我〉を貫いて生きた一人の女性像を描く。2度にわたる東宝争議(1946年2月と10月)の間につくられ,脚本審議会の意向黒沢意志に反して脚本が書き直されたという内部事情があり,〈最後の2000フィート,200カット近い映像に執念に近い熱意を傾けた〉が,黒沢の描いた女性像をめぐって偏執的な女性であるとする批判さえあらわれ,黒沢自身が題名とは逆に〈おおいに悔あり〉とする映画でもあるといわれる。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

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