ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ワルザー」の意味・わかりやすい解説
ワルザー
Walser, Martin
[没]2023.7.26. ユーバーリンゲン,ヌスドルフ
マルティン・ワルザー。ドイツの小説家,劇作家。ギュンター・グラスやジークフリート・レンツらと並ぶ現代ドイツ文学の重鎮。
ボーデン湖畔の石炭を商う宿屋に生まれる。10歳で父親を亡くし,徴兵により第2次世界大戦に従軍。陸軍兵士として終戦を迎える。復員したのち大学に入り,レーゲンスブルクとテュービンゲンの大学で歴史,哲学,文芸学を学び,1951年にフランツ・カフカの研究で博士号を取得。在学中から南ドイツ放送でジャーナリストとして活動した。1953年から大戦後の西ドイツ文学を支えた先鋭的文学集団「47年グループ」に参加し,1955年には『テンプローネの最期』Templones Endeで 47年グループ賞を受賞。一貫して社会批判色の強い作品を発表した。主著に,小説『フィリップスブルクの結婚』Ehen in Philippsburg(1957),三部作をなす『ハーフタイム』Halbzeit(1960),『一角獣』Das Einhorn(1966),『転落』Sturz(1973),戯曲『樫とアンゴラうさぎ』Eiche und Angora(1962),『黒いスワン』Der schwarze Schwan(1964),自伝的小説『ほとばしる泉』Ein springender Brunnen(1998),著名な文芸評論家であるマルセル・ライヒ=ラニツキを連想させる『ある批評家の死』Tod eines Kritikers(2002)など。1987年にドイツ連邦共和国功労大十字章を受勲。1957年ヘルマン・ヘッセ賞,1980年シラー賞,1981年ビュヒナー賞など受賞多数。
ワルザー
Walser, Robert
[没]1956.12.25. ヘリザウ
スイスの詩人,小説家。さまざまな職業を経たのち,ベルリンで作家生活に入る。 1933年から終生精神病院で過す。印象主義的な細密描写を通して,幼児的夢想,無能者的敬虔に漂う繊細な感情を,ロマン的アイロニーを交えて表わした文章は,カフカをはじめとして賛美者が多い。小品のほか,『タンナー兄妹』 Geschwister Tanner (1907) ,『ヤーコプ・フォン・グンテン』 Jakob von Gunten (09) などの小説がある。
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