日本大百科全書(ニッポニカ) 「アカシカ」の意味・わかりやすい解説
アカシカ
あかしか / 赤鹿
red deer
[学] Cervus elaphus
哺乳(ほにゅう)綱偶蹄(ぐうてい)目シカ科の動物。ヨーロッパ、アジア西部、アジア中北部、北アフリカに分布し、各地に多くの亜種がある。北アメリカに産するワピチC. canadensisは、学者により別種にする場合と、アカシカの亜種として扱う場合がある。大形のシカで、産地により体格に差はあるが、頭胴長1.65~2.65メートル、体高0.75~1.5メートル、体重58~255キログラムに達する。角(つの)は最大のもので1.3メートルに達し、頭骨の小片からなる枝をつけた角の重量が19キログラムにもなった例がある。体色は夏季には黄褐色から赤褐色を呈するが、冬季には暗褐色、褐色となる。尾の下方、臀部(でんぶ)には大きな白い斑紋(はんもん)がある。森林に群れてすむが、発情期以外は雌雄は別に暮らしている。雄の角は3~4月に脱落し、新しい角は100日ほどで伸びる。このころの雄は雌に関心を払わないが、8月になると袋角(ふくろづの)の外側を包む皮膚がむけ始め、しだいに雄の行動は荒々しくなる。発情期は9~10月で、この時期の雄は大声でほえ互いに争って、勝者が雌を従えハレムをつくる。雌は2~3歳で出産し、妊娠期間は約8か月。5~6月に1子または2子を産む。子には白斑があり、8~10か月乳を飲む。寿命は20年。
[増井光子]