翻訳|wapiti
アカシカにごく近縁な大型のシカ。偶蹄目シカ科の哺乳類。キジリジカともいう。北アメリカから北東アジアに分布し,ヨーロッパから西アジアに分布するアカシカと同一種とされることもある。体長200~275cm,尾長8~20cm,肩高1.6m,体重250~450kg。体はアカシカより大型だが尾はやや短い。角は雄にだけあり,非常に大きく,5本以上の枝があり,長さは大きなものでは165cmにもなる。ふつう夏毛では背面と四肢は黄褐色,あごと腹面は黒褐色で,冬毛は淡い灰褐色となる。しりには大きな淡色斑がある。おもに高地の深い森林にすみ,食物を求めて季節的な移動を行う。ふだんは雌と子は群れでいて,大きな群れをなすこともあるが,雄の成獣は単独か小群でいる。夏の主食は高地に生える木の葉だが,冬には谷間の森林まで下り,枯れ草やヤナギ類の芽などを食べる。交尾期は秋で,雄は頻繁に泥浴びをしてよくほえ,雄どうしは闘ってなわばりを形成し,そこへ雌をさそう。妊娠期間249~262日,5~6月に雌は群れを離れ,茂みで1産1子,まれに3子を生む。寿命は飼育下では22~25年の記録があるが,野生のものは平均10年くらいと考えられている。
なお,ワピチは北アメリカのインディアンによる呼称で,合衆国ではエルクelkとも呼ぶ。しかし,エルクはヨーロッパではヘラジカを指し,ヘラジカの別名のオオシカがワピチの和名として誤って使われることもある。
執筆者:今泉 忠明
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
哺乳(ほにゅう)綱偶蹄(ぐうてい)目シカ科の動物。大形のシカでオオジカともよばれる。北アメリカ北西部、カナダ、中国東北部、甘粛(かんしゅく)省、天山(てんざん)山脈、モンゴルと分布は広い。体長180~240センチメートル、肩高130~140センチメートル、体重188~500キログラムに達する。夏毛は黄褐色で、顔、四肢、頸部(けいぶ)は暗褐色。尾の周りに白っぽい大きな斑(はん)がある。冬毛は長い上毛と縮れた下毛からなり、灰褐色で、顔、四肢、頸部は暗褐色となる。発情期は秋で、この時期にはハレム形式となるが、冬季は雌雄混合の大群となり、春季には群れは分かれて、雄群と、雌と子の数十頭の群れとなる。早朝、夕刻に採食し、夏は涼しい山地に、冬は低地に移動する。時速46キロメートルほどのスピードをもち、水泳も巧みである。天敵はピューマ、オオカミ、ハイイログマ、コヨーテ、オオヤマネコなどである。5~6月に1~2子を産む。妊娠期間249~262日。寿命15~20年。
[増井光子]
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
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