アクリロニトリルブタジエンゴム(英語表記)acrylonitrile-butadiene rubber

改訂新版 世界大百科事典 の解説

アクリロニトリル・ブタジエンゴム
acrylonitrile-butadiene rubber

略称NBRアクリロニトリルブタジエンを共重合させて得られる合成ゴムで,一般にニトリルゴムnitrile rubberとも呼ばれる。耐油性のすぐれた特殊ゴムの一種である。1930年代にドイツで研究,工業化されたもので,初期にはブナN(Buna N),のちにペルブナンPerbunanという商品名で市販された。太平洋戦争中はアメリカにおいて政府管理のGovernment Synthetic Rubber Programにより軍需用としてGR-Aという名称で量産された。日本においても太平洋戦争中は軍需用に研究され,パイロットプラント規模で製造するところまできたが本格生産までにはいたらず,戦後,59年から商業生産が開始された。重合法としては,ラジカル重合開始剤を用いた乳化重合法が採用されている。NBRはきわめてすぐれた耐油性を示すが,この特性は成分のアクリロニトリルによるもので,その含有率の増加にしたがって耐油性は向上するが,耐寒性,加工性は低下する。標準的な含有率は25~30%程度で,これを中ニトリル,24%以下を低ニトリル,31~35%を中高ニトリル,36~42%を高ニトリル,43%以上を極高ニトリルと呼ぶ。工業用機器の耐油性ホース,パッキングオイルシールロールなどに多量使用されている。身近なものとしては自動車のガソリン用チューブとして使用されており,近代生活に欠くことのできぬ材料である。NBRは,ガソリン,機械油などの石油系油にはよく耐えるが,ケトンエステルアルコールなどの極性溶媒に対する耐性は低い。
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化学辞典 第2版 の解説

アクリロニトリル-ブタジエンゴム
アクリロニトリルブタジエンゴム
acrylonitrile-butadiene rubber

略称NBR.ブダジエン-アクリロニトリルゴム,ニトリルゴムともいう.アクリロニトリルとブタジエン共重合体で,耐油性の合成ゴムとしてもっとも一般的に使われている.工業的には,低温乳化重合でつくられる.アクリロニトリル含有量により耐油性が異なり,一般に15~50% のものが耐油性ゴムとして用いられる.天然ゴムに比較して耐溶剤性,耐摩耗性,耐熱性,耐オゾン性などの点がすぐれている.おもな用途は,ガスケット,燃料や鉱油用ホース,オイルシール,工業用ゴムロール,コンベヤーベルト,耐油性防振ゴムなどである.[CAS 9003-18-3]

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百科事典マイペディア の解説

アクリロニトリル・ブタジエンゴム

NBR(acrylonitrile-butadiene rubberの略),またはニトリルゴムとも。アクリロニトリルとブタジエンの共重合によって得られる合成ゴム。耐油性,耐摩耗性が天然ゴムより高く,工業用機器,自動車部品の送油管,パッキン,シールなどに不可欠。もともと天然ゴムの産出地を自国領土・植民地に持たなかったドイツで1930年代に開発され,ブナNと名づけられ(後ペルブナン),米国ではGR-Aと呼ばれた。ベンゼン,四塩化炭素以外の溶剤に耐える。→スチレン・ブタジエンゴム
→関連項目合成ゴム

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