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ベンゼン benzene

翻訳|benzene

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

ベンゼン
benzene

ベンゾールともいう。化学式 C6H6 。融点 5.5℃,沸点 80.1℃,比重 0.88の無色の液体。 1825年 M.ファラデーによって石炭ガス中から発見された。石炭乾留によって得られるタール軽油の成分として製造されていたが,現在では石油から生産されているものが大部分である。見かけ上3個の不飽和結合をもつ六員環式炭化水素であるが,ベンゼン環とも呼ばれるこの六員環は非常に安定で,付加反応や還元反応など二重結合に関する反応が起りにくく,置換反応が起りやすい。このためベンゼン環をもつ化合物は芳香族化合物として脂肪族化合物と区別されている。ベンゼンの安定性は共役二重結合の π 電子の共鳴によるものとして説明され,その炭素原子間の距離は 1.39Å で,単結合の 1.54Å と二重結合の 1.34Å の中間の値をとっている。その構造式は F.A.ケクレによって与えられたI式が便宜的に使われるが,単に II式のように表示したり,III,IV式のように表わしたりする。環に結合した水素原子は省略される場合が多い。ベンゼン環芳香族炭化水素の基本骨格である。ベンゼンは水に不溶,有機溶媒に可溶,多くの有機化合物を溶解するので溶媒として用いられる。また,多くの有機薬品の合成原料であり,染料,医薬品など多くの物質の合成の出発物質となっている。

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デジタル大辞泉の解説

ベンゼン(benzene)

最も基本的な芳香族炭化水素。特有の芳香をもつ無色、揮発性の液体。水に溶けにくいが有機溶媒には溶ける。タール分別蒸留などで得られ、有毒。化学薬品の基礎物質となり、燃料などにも用いられる。分子式C6H6で、亀甲(きっこう)形の構造をしている。ベンゾール

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百科事典マイペディアの解説

ベンゼン

化学式はC6H6。特色のある芳香を有する無色の揮発性液体。もっとも簡単な芳香族炭化水素である。融点5.5℃,沸点80.1℃。水に微溶,多くの有機溶媒に可溶。
→関連項目環境基準工業中毒ごみ公害石炭化学石油化学染料タール染料DDTベンゼン中毒

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栄養・生化学辞典の解説

ベンゼン

 C6H6 (mw78.11).

 溶剤や化学合成の原料などに利用される.

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世界大百科事典 第2版の解説

ベンゼン【benzene】

化学式C6H6。ドイツ語Benzolにちなんでベンゾールともいう。特色ある臭気をもつ液体で,最も簡単な芳香族炭化水素。融点5.49℃,沸点80.13℃,密度d420=0.87865g/cm3,屈折率nD20=1.5011。引火点-11.10℃,爆発限界は空気中で1.4~8.0%(容量)である。燃えやすく大量のすすを生じて燃える。有毒で,ベンゼンと常時接触するか,高濃度の蒸気を吸入すると中毒を起こす。

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大辞林 第三版の解説

ベンゼン【benzene】

最も基本的な芳香族炭化水素。化学式 C6H6 亀の甲型の平面正六角形構造をもつ。芳香のある無色揮発性の液体で、医薬・染料・香料・爆薬などの合成原料となる。蒸気を吸入すると有害。ベンゾール。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

ベンゼン
べんぜん
benzene英語
Benzolドイツ語

代表的な芳香族炭化水素で、炭素原子6個が正六角形の6員環をなしている典型的な芳香族化合物である。ベンゾールとよばれることもある。さらに、古くはドイツでベンジンBenzinとよばれていたが、この名前は安息香酸benzoic acidを石灰とともに蒸留して得たことに由来し、E・ミッチェルリヒが命名した(1883)。benzeneという綴字(つづりじ)はA・W・ホフマンによるといわれる。[向井利夫・廣田 穰]

性質と構造

特有のにおいをもつ無色透明で可燃性の液体で、煤(すす)の多い黒い煙をあげて燃える。その蒸気は有毒である。水には難溶だが、エタノール(エチルアルコール)やエーテルとは任意の割合で混じり合う。大気中のベンゼンは有害大気汚染物質と定められていて、長期間吸収すると造血器の障害をおこし、貧血などの原因になる。白血病などの癌(がん)性疾患を引き起こすともいわれている。
 1825年にイギリスのM・ファラデーにより、鯨油の赤熱分解で得られたガスを凝縮させた液体中から最初に発見され、発見当時からその構造と化学的特性に関心が集まった。1865年、ドイツのF・A・ケクレが有名な亀甲(きっこう)形の六角環状説(ベンゼン環)を提案したが、最終的には1930年代になって、ようやくX線および電子線回折測定により正確な構造が決められた。それによると、ベンゼン環は1辺が0.1399ナノメートルの正六角形で、6本の炭素‐炭素(C-C)結合はまったく同等であり、6個のπ(パイ)電子が3本の二重結合に2個ずつ局在化しているのではなく、6個の炭素に平等に共有され、非局在化していることが証明された。ベンゼンの構造、性質が解明される過程において芳香族化合物の化学は発展し、この意味でも化学に果たした役割は非常に大きい。[向井利夫・廣田 穰]

製法

石炭タールまたは石油から製造されている。しかし、芳香族炭化水素の石油中に含まれる量は少ないので、石油化学工業ではナフサの接触分解、リホーミングによりベンゼンのみならずトルエン、キシレンを含む炭化水素油をつくり、これから分留してベンゼンを製造する。またアルキルベンゼンのような高級同族体からは、脱アルキル化、水素化分解法によりベンゼンを得ている。[向井利夫・廣田 穰]

反応

芳香族性として知られているπ電子の非局在化によりベンゼン環が安定化していて壊れにくいので、ベンゼン誘導体はベンゼン環が失われる付加反応ではなく、反応の後にもベンゼン環が残る置換反応をおこしやすいという特徴がある。ベンゼンの置換反応としては、次の(1)~(4)などが代表的であり、これらの反応はいずれもベンゼン置換体の重要な合成法である。
(1)硝酸と硫酸混合物によるニトロベンゼンの生成(ニトロ化)
(2)発煙硫酸によるベンゼンスルホン酸の生成(スルホン化)
(3)鉄粉を触媒とする塩素、臭素などのハロゲンとの反応によるクロロベンゼンやブロモベンゼンの生成(ハロゲン化)
(4)塩化アルミニウムを触媒としたアルキル化によるアルキルベンゼンの生成、ならびにアシル化によるアセトフェノンなどの芳香族ケトンの生成(フリーデル‐クラフツ反応)。
 これら(1)~(4)の反応では陽イオン試薬がπ電子(負電荷)をもつベンゼン環に反応しているので、芳香族求電子置換反応と総称されている。
 しかし、次の(5)~(7)の例のように、高温、高圧といった強い反応条件下では、ベンゼン環への付加やベンゼン環が開環する反応もみられる。
(5)白金触媒やニッケル触媒を用いる水素化によるシクロヘキサンの生成
(6)接触気相酸化による無水マレイン酸などの合成
(7)光を照射しながら塩素を反応させてBHC(ベンゼンヘキサクロリドの略、別名1,2,3,4,5,6-ヘキサクロロシクロヘキサン)を得る反応。[向井利夫・廣田 穰]

用途

各種化学製品の中間体製造のための出発原料として重要である。ベンゼンはアルキルベンゼン、フェノール、アニリン、スチレン、クロロベンゼン、ニトロベンゼン、無水マレイン酸などの合成原料であり、これらからさらに各種の樹脂、繊維、洗剤、染料、殺虫剤、爆薬、医薬品などが誘導される()。[向井利夫・廣田 穰]
『山岡望著『化学史談5・ベンゼン祭』(1958・内田老鶴圃) ▽吉田善一・大澤映二著『化学モノグラフ22 芳香族性』(1971・化学同人) ▽中西準子・吉門洋・川崎一・東野晴行著『詳細リスク評価書シリーズ18 ベンゼン』(2008・丸善)』

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世界大百科事典内のベンゼンの言及

【化学工業】より

…コークスや石炭ガス需要が増大するにつれ,それまで廃物として取扱いに困っていたコールタールを有効に利用することが考えられるようになった。A.W.vonホフマンを中心にコールタールの分析が進み,芳香族炭化水素であるベンゼンが発見された。1856年には弟子の一人であるW.H.パーキンが,ベンゼンからアニリン染料〈モーブ〉を合成するのに成功した。…

【石炭化学工業】より

…石炭化学工業とは,化学工業のなかで石炭を原料として各種の化学製品を生産する産業で,石炭を乾留して得られる石炭ガス,コークス,コールタールを原料とするものと,石炭をガス化して原料とするもの,の二つに大別することができる。おもな製品としては,石炭ガスからつくられるBTX類(ベンゼン,トルエン,キシレン),コールタールからつくられるピッチ,クレオソート油などがある。なおコークスからカーバイドを経てアセチレンを生産する産業は,電気化学工業の範疇(はんちゆう)に入る。…

※「ベンゼン」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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