アセトンブタノール発酵(読み)あせとんぶたのーるはっこう

日本大百科全書(ニッポニカ) 「アセトンブタノール発酵」の意味・わかりやすい解説

アセトンブタノール発酵
あせとんぶたのーるはっこう

クロストリジウムに属する細菌にみられる発酵の一種。この細菌は、酸素のないところで炭水化物を摂取して、アセトンブタノールを放出し、この過程で得られたエネルギーを利用して生きている。アセトンブタノール発酵は19世紀末に発見されて以来、トウモロコシ、蔗糖蜜(しょとうみつ)、デンプン粕(かす)、サツマイモなどを原料とし、この細菌を利用してアセトンやブタノールを製造し、一時はアセトンの工業的製法として大規模に行われた。炭水化物は解糖や発酵と同様の経路を経てピルビン酸を生じ、さらにアセチル補酵素Aに変化し、これからアセトンやブタノールを生ずる。同時に酪酸酢酸エタノールなどの副産物とともに二酸化炭素(炭酸ガス)と水素を放出する。

[飯島康輝]

『友枝幹夫ほか著『微生物の性状と機能』(1990・弘学出版)』『村尾澤夫・荒井基夫編『応用微生物学』改訂版(1993・培風館)』

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改訂新版 世界大百科事典 「アセトンブタノール発酵」の意味・わかりやすい解説

アセトンブタノール発酵 (アセトンブタノールはっこう)
acetone-butanol fermentation

嫌気性細菌の1種であるクロストリディウム属のClostridium butyricumC.acetobutylicumなどにより糖質からブタノール,アセトンなどを生成する発酵で,同時にエタノール,酪酸,酢酸,炭酸ガス,水素ガスなども生成する。生産菌が酸素によって死滅する性質を有するため,本発酵は無酸素の条件下で行われる。生産物の比率は菌の種類,発酵条件を選択することによって変化し,主として酪酸を生成するようにすることも可能であり,その場合には酪酸発酵と称される。19世紀末に発見されてから溶剤燃料など化学工業原料の製造法として一時期大規模に実施されたが,石油化学工業勃興と同時に消失した。しかし最近の石油価格の高騰にともなって,改めて農産廃棄物などからのエネルギー回収の手段として検討が始まっている。
発酵
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