アダムズ方式(読み)アダムズホウシキ

デジタル大辞泉 「アダムズ方式」の意味・読み・例文・類語

アダムズ‐ほうしき〔‐ハウシキ〕【アダムズ方式】

選挙区人口に応じて議席配分する方法一つ。選挙区の人口をある数Xで割り、小数点以下を切り上げた値をその選挙区の定数とする。Xは議席数の合計が総定数と等しくなるように調整する。第6代米大統領ジョン=クインシー=アダムズが考案したとされる。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「アダムズ方式」の意味・わかりやすい解説

アダムズ方式
あだむずほうしき
Adams' Method
Adams' Apportionment Method

人口比を重視して議員定数を配分する方法の一つ。1830年代にアメリカの第6代大統領ジョン・クインシーアダムズが提唱したことから、こうよばれる。アダムズ方式では、まず州や都道府県など一定地域の人口を仮の「特定数X」(基準除数)で割り、商の小数点以下を切り上げた整数を、その地域の議員定数とする。次に、すべての地域の議員定数の合計値が総定数と等しくなるようにXを調整・決定する仕組みである。国勢調査などに基づいて議員定数を割り振るため、人口比により正確な配分ができ、1票の格差是正する効果があるとされる。日本では、2023年(令和5)以降に行われる衆議院選挙から、小選挙区の都道府県への定数配分と比例ブロックへの定数配分に適用される。

 日本の衆議院選挙小選挙区では、都道府県にまず定数1を配分し、残りを人口比で配分する「1人別枠方式」をとっていた。しかし最高裁判所は2011年(平成23)、都道府県間の1票の格差(2009年衆議院選挙で2.30倍)を違憲状態と判断し、1人別枠方式の廃止を求めた。これを受け衆議院選挙制度改革関連法(2016)や改正公職選挙法(2022)などが成立し、10年ごとの国勢調査(大規模調査)に基づき、日本で初めて、衆議院小選挙区の都道府県への定数配分などにアダムズ方式を適用することが決まった。

 一般に議席配分は、議席数が整数のため、数学的に厳密に人口比で配分すると、剰余(小数点以下)が生じる。このため議席配分方法には、整数部分の配分を決めた後、(1)小数点以下の数値の大きい選挙区から順番に議席を配分する最大剰余方式、(2)小数点以下を切り上げるアダムズ方式、(3)小数点以下を四捨五入するサンラグ方式、(4)小数点以下を切り捨てるドント方式、などがある。アダムズ方式は小数点以下を切り上げるため、人口が少ない地域に有利な配分方法とされている。

[矢野 武 2023年7月19日]

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知恵蔵 「アダムズ方式」の解説

アダムズ方式

選挙制度における議員定数の配分方法の一つ。現行の衆議院議員小選挙区選挙の1人別枠方式と比べて人口比をより反映しやすい計算方法を用いるもので、米国の第6代大統領アダムズが考案したとされる。衆議院議長の諮問機関「衆議院選挙制度に関する調査会」(座長佐々木毅・元東大総長)が、2016年1月に大島理森・衆議院議長に提出した答申において、「1票の格差」是正のための配分方式として採用を求めた。
アダムズ方式は、都道府県の人口を一定の数値xで割り、商の小数点以下を切り上げた値をそれぞれの定数とし、各定数の合計が小選挙区選挙の総定数と一致するようにxを調整する方式。調査会では、アダムズ方式の他ヘア式最大剰余法、ドント方式など9方式を検討し、比例性のある配分方式で、議席の増減変動が小さく、一定程度将来にわたって有効に機能しうるなどとしてアダムズ方式が望ましいと結論付けた。答申通り小選挙区定数を6減らす場合、この方式で10年国勢調査人口に基づいて計算すると、「7増13減」となる。これは東京都で3増、4県で各1増になる一方、13県で各1減になるというもので、「1票の格差」は最大1.621倍になる。
この答申を受けて、安倍晋三首相は、アダムズ方式を導入した「1票の格差」是正の抜本改革は20年以降に先送りし、当面は議員1人当たりの人口が少ない県を対象に小選挙区を6減らす考えを表明。これに対し、民主党や維新の党がアダムズ方式の早期導入を求めるなど、与野党の意見は隔たりを見せている。

(原田英美 ライター/2016年)

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知恵蔵mini 「アダムズ方式」の解説

アダムズ方式

選挙区の議席配分法の一つ。米国の第6代大統領アダムズが提唱したとされる。日本では「1票の格差問題」などを受け、2014年9月より衆院議長の諮問機関「衆院選挙制度に関する調査会」が、9種類の議席配分方式を検討。15年11月の14回目会合で、都道府県の人口をある定数で割って得られた商の小数点以下を切り上げ1議席を加えたものをその自治体の議席数とするアダムズ方式を採用することなどで意見がほぼ一致した。この方式では、定数が1議席となる都道府県がなくなり、各都道府県の人口比を反映しやすいといった利点がある。またこれを実施した場合、1票の格差は「1.568倍」となり、最高裁の判例による基準をクリアできる見通しとなる。

(2015-11-24)

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