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アファーマティブ・アクション アファーマティブ・アクションaffirmative action

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

アファーマティブ・アクション
affirmative action

黒人,少数民族,女性など歴史的,構造的に差別されてきた集団に対し,雇用,教育などを保障するアメリカ合衆国の特別優遇政策。「積極措置」と訳されることもあるが定訳はない。リンドン・B.ジョンソン大統領(在任 1963~69)の時代に導入。政府機関,連邦政府と契約関係にある企業,大学などで,その規模に応じ一定の枠内での雇用,入学を法律で義務づける,あるいは行政指導を行なう。これが一般に割当制度 quota systemと呼ばれるもので,その特権を享受した黒人も多い。一方こうした特別の優遇措置は白人に対する逆差別であり,憲法違反とする見方がレーガン政権,ブッシュ政権の時代に強まり,黒人の側からも一種の人種的侮辱であり,もはや必要ではないとする声が出始めた。連邦最高裁判所は 1978年以降,アファーマティブ・アクションが過度に特定集団を優遇することを違憲とする判決をくだしてきたが,制度自体は 2003年の判決などで合憲と判断している。(→カリフォルニア大学理事会対バッキー裁判

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知恵蔵の解説

アファーマティブ・アクション

差別や不利益を被ってきたマイノリティーの、職業、教育上の差別撤廃措置。具体的には、入学者数、雇用者数に受け入れ枠や目標値を定めて、白人男性が歴史的に圧倒的多数派を形成してきた領域での、黒人、ヒスパニック、女性などの就学、雇用の機会を保証しようとする。最も典型的なのが裁判所の命令により、生徒を隣接地域へバスで強制的に通学させるバッシングで、公民権法などにより禁じられた後にも根強く残存する差別の除去には、一定の効果を収めた。だが、リバース・ディスクリミネーション(逆差別)につながるとする白人たちの反発、巻き返し(ホワイト・バックラッシュ)は、人種別割当制度の是非、公民権法案の修正などをめぐる差別・逆差別論議を呼び、共和党は機械的な差別解消策はかえって「機会均等」を妨げるとして撤廃を主張。とりわけ黒人に対する優遇措置に逆差別感情を抱く者の割合が年を追って増え、非白人層にまで及んでいる現実を踏まえて、クリントン政権は1995年7月、制度継続と部分的改善の必要性を主張。経済的困窮度の高い人を優先するなど制度の公正な適用を求めると共に、機械的な割当制の撤廃を提唱した。ブッシュ大統領は、ミシガン大学が割当制に基づき、少数者優遇措置で黒人学生などを優先入学させることを、不公正な仕組みで憲法違反だと批判。2003年1月、連邦最高裁判所に意見書を提出した。同最高裁は同年6月、適用や運用の範囲を限定しつつ、措置そのものは合憲と決定を下した。

(井上健 東京大学大学院総合文化研究科教授 / 2007年)

出典|(株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について | 情報

百科事典マイペディアの解説

アファーマティブ・アクション

積極的な差別是正策,積極的な優遇措置の意。少数民族や女性など,これまで長い間差別を受けてきた人々に対し,差別的待遇をやめ雇用や昇進,入学などにおいて積極的な措置をとること。
→関連項目アメリカ合衆国黒人問題性差別男女共同参画会議男女共同参画社会基本法男女別学ポリティカル・コレクトネス

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

アファーマティブ・アクション
あふぁーまてぃぶあくしょん
affirmative action

アメリカ合衆国において、長年にわたって差別を受けてきた黒人をはじめとする少数人種諸集団や女性に対して、経済的・社会的地位の改善、向上を目的に、連邦政府や地方自治体、民間企業、大学などが進めてきた差別是正のための特別措置(積極的措置)の総称。政府の調達契約の一定部分を少数集団や女性が所有する企業に発注したり、少数集団や女性の進出が著しく立ち後れている職種へ優先的に採用、昇格を行ったり、大学入学の際に人種を考慮したりする、などが代表的な特別措置の事例である。このほか、1982年の投票権法の改正を受けて進められてきた少数集団の候補者が有利になるような選挙区の設定なども、政治の領域における一種の特別措置とみなすことができる。積年にわたる差別とその結果の是正には、法の下の平等や機会の均等という形式的平等の保障だけでは不十分、というのが特別措置を推進ないし容認する論拠であったのに対し、それは誤った優遇措置であり、白人や男性に対する逆差別になるとの批判も当初から根強く存在してきた。このため、特別措置の是非はしばしば裁判によって争われることになった。
 特別措置をめぐる連邦最高裁判所の判例として有名なのは、教育の分野でのバーキ判決(1978)や雇用にかかわるウェーバー判決(1979)であり、そこでは差別の結果を是正する一つの方法として、人種を考慮に入れることは適法と判断された。しかるに、1990年代中葉の一連の判決は、人種の考慮については厳格な基準を設けるとともに、特別措置に対してより消極的ないし否定的判断を下す傾向にある。政府の調達契約をめぐる連邦最高裁判所のアダランダ判決(1995)、選挙区の線引きをめぐるショウ判決(1993)やミラー判決(1995)、またテキサス大学ロー・スクールの優先入学制度をめぐる第五巡回区控訴裁判所のホプウッド判決(1996)、雇用をめぐる第三巡回区控訴裁判所のタクスマン判決(1996)などがその代表的判例である。アファーマティブ・アクションの見直しや廃止を要求する組織的な動きも強まり、カリフォルニア州においては、州政府によるアファーマティブ・アクション政策の禁止を要求する住民提案209号が1995年に採択されている。
 アファーマティブ・アクションをめぐって多くの混乱や批判が生じた最大の理由は、それが明確な理念にたって十分に練りあげられ、広く国民的合意の下で進められてきたものではなかった点に求められる。(1)人種差別と性差別という、歴史的経緯も差別の構造も異なるものを同一の方式で解決しようとしたこと、(2)差別を支えるもろもろの仕組みや制度に手をつけずに、その前提上で差別の解消を図ろうとしていること、(3)資本主義がもたらす階級的差別と人種差別との間の区別と関連に関する認識が欠落していること、などが今後検討されるべき理論上の課題である。さらに、アファーマティブ・アクションが一定の資格や条件を満たすものに対する施策という、限定的性格をもっていることを考えるとき、人種や性別にかかわらず多くのアメリカ国民が直面している貧困や失業、劣悪な居住環境をいかに改善するのかという、普遍的性格を有する施策との関連も、解明を迫られている重要な課題である。[大塚秀之]
『今田克司著『アメリカにおけるアファーマティブ・アクションの概要と実際』(1992・日本太平洋資料ネットワーク)』

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