アブハジア(読み)あぶはじあ(英語表記)Абхазия/Abhaziya

デジタル大辞泉 「アブハジア」の意味・読み・例文・類語

アブハジア(Abkhazia/Абхазия)

ジョージア西部、黒海沿岸に位置する地域。中心都市スフミ。オスマン帝国支配を経て19世紀に帝政ロシア領有ロシア革命後、ジョージアに属する自治共和国となる。ソビエト連邦崩壊後の1992年に独立宣言ロシア連邦など数か国が承認するも、ジョージアとの紛争が続いている。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「アブハジア」の意味・わかりやすい解説

アブハジア
あぶはじあ
Абхазия/Abhaziya

ジョージア(グルジア)に属する自治共和国。アジア南西部、黒海沿岸に位置する。面積8600平方キロメートル、人口51万7500(2003推計)。首都はスフーミ

[上野俊彦]

沿革

1810年トルコへの従属状態から脱してロシア領に編入され、1864年ロシアのスフーミ州となった。1921年3月アブハズ・ソビエト社会主義共和国が設立され、同年12月、ジョージア・ソビエト社会主義共和国の成立とともに同国に属する自治共和国となり、1931年アブハズ自治ソビエト社会主義共和国Абхазская АССР/Abhazskaya ASSRとなった。ソ連崩壊(1991年12月)前年の1990年12月アブハジア自治共和国Автономная Республика Абхазия/Avtonomnaya Respublika Abhaziyaとなり、崩壊後の1992年7月主権を宣言、「アブハジア共和国」を名のった。しかし、ジョージアからの分離独立とロシア連邦への編入を求めるアブハズ人とジョージア人の対立を背景に、1992~1994年アブハジアの地位をめぐって武力紛争が起きた(アブハジア紛争)。この過程で、ジョージア系住民がアブハジアから追い出され、多数のジョージア人難民が発生した。1994年休戦協定が結ばれた。

 なおアブハジアは、ソ連の国家構造のもとではジョージア共和国内の自治共和国とされていたが、ジョージア独立(1991年)後、ジョージア政府は1995年まで正式にアブハジアの自治権を認めていなかった。

[上野俊彦]

国土

国土は黒海に面し、大カフカス山脈南斜面とコルヒダ低地からなり、北はロシア連邦との国境となっている。気候湿潤亜熱帯気候。平均気温は沿岸部で1月4℃~7℃、7月22℃~24℃、山岳部で1月零下2℃~2℃、7月16℃~18℃。年降水量は沿岸地域で1300ミリメートル、山地で2400ミリメートル。国土の55%は森林に覆われ、沿岸地域には亜熱帯植物群がみられる。

[上野俊彦]

住民・産業

1989年国勢調査による民族構成は、ジョージア人(24万5400、45.7%)、アブハズ人(9万5600、17.8%)、アルメニア人(7万8400、14.6%)、ロシア人(7万6800、14.3%)、その他である。アブハズ人の言語アブハズ語は、ロシア連邦アディゲア共和国に居住するアディゲイ人のアディゲイ語、同カバルディノ・バルカリア共和国に居住するカバルダ(カバルディン)人と同カラチャエボ・チェルケシア共和国に居住するチェルケス人の言語であるカバルディノ・チェルケス語と同系の、カフカス諸語アブハズ・アディゲイ諸言語に属する。宗教はイスラム教スンニー派。

 おもな工業は、食品加工(茶、たばこ、ワイン醸造、缶詰)、軽工業(革靴製造、絹織物)、木材加工、機械・建築資材生産、石炭採掘。農業は、茶、柑橘(かんきつ)類、タバコ、桐油(とうゆ)その他の植物油精製用作物、果樹、ブドウトウモロコシの栽培。スフーミは黒海沿岸のリゾート地として有名。

[上野俊彦]

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百科事典マイペディア 「アブハジア」の意味・わかりやすい解説

アブハジア

ジョージアの北西部,黒海に面する自治共和国。面積8600km2,人口17万8600人(2004年)。主都スフミ。アブハジア人は南部のアジャリア自治共和国やトルコ等にも住み,アブハジア語はカフカス諸語の北西グループに属する。自治共和国の民族構成はジョージア人約46%,アブハジア人約18%,アルメニア人とロシア人が各14%ほど。前5〜前6世紀にはコルキス王国の一部となり,ローマ,ビザンティン,アラブ,オスマン・トルコなどの支配をへて,1810年ロシア帝国に併合。イスラム教徒のアブハジア人の多くがトルコ領に移った。1921年独立のソビエト共和国を形成したがジョージア共和国に加わる。ソ連崩壊後の1992年アブハジア共和国を宣言し,ジョージアからの分離独立をめざすが,ジョージア軍と衝突,ロシアの介入をへて1994年4月停戦協定。
→関連項目カフカス

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