アホロートル(その他表記)axolotl

翻訳|axolotl

デジタル大辞泉 「アホロートル」の意味・読み・例文・類語

アホロートル(〈スペイン〉axolotl)

有尾目アンビストマ科両生類メキシコ南部の湖にすむメキシコサンショウウオが、水質により幼形成熟し、三対の外えらを消失しないまま繁殖したもの。
[補説]「ウーパールーパー」は日本での俗称。

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精選版 日本国語大辞典 「アホロートル」の意味・読み・例文・類語

アホロートル

  1. 〘 名詞 〙 ( [スペイン語] axolotl 「水に遊ぶ怪物」の意 ) 両生綱有尾目のマルクチサラマンダーの数種のうち、幼形成熟したものをいう。メキシコサラマンダーなどは、幼生のままの状態で成長し、大きさは二〇センチメートルほどで、外鰓(がいさい)があるのに産卵する。

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改訂新版 世界大百科事典 「アホロートル」の意味・わかりやすい解説

アホロートル
axolotl

アンビストマ科のメキシコサンショウウオAmbystoma mexicanum(全長25cm)のうち,メキシコ市周辺の湖にのみ生息する個体群の幼生で,幼生の形のまま成熟し繁殖能力をもつ。全長10~18cm,3対の外鰓(がいさい)をもつ。アホロートルはアステカ語で〈水遊び〉の意味。いわゆる幼形成熟(ネオテニー)したもので,低温の環境で育つことと餌や水中のヨウ素不足が原因と考えられる。環境を変えたり甲状腺ホルモンを与えたりすると変態するようになる。近縁のトラフサンショウウオA.tigrinumもおかれた条件によってはネオテニーを行うことがある。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「アホロートル」の意味・わかりやすい解説

アホロートル
あほろーとる
axolotl
[学] Ambystoma mexicanum

両生綱有尾目アンビストマ科のサンショウウオ。メキシコサンショウウオともよぶ。アホロートルとはアステカ語でwater dogに該当することばである。メキシコ・シティ周辺の湖に多く、現地では食用にする。本種は変態しないで一生を過ごし、幼生形のまま性的に成熟して繁殖する。この現象を幼形成熟という。全長20センチメートル前後。全身黒色であるが、黄白色のアルビノ(白化型)がときに生じる。3対のえらは大きく発達し、四肢は比較的小さい。飼育が容易であるため、現在では生物学の実験材料として各国で飼育されている。

 アンビストマ科は北アメリカと中央アメリカに分布し、4属約30種を含む。この科にはトラフサンショウウオA. tigrinumをはじめ、幼形成熟の種が多く、これらを一括してアホロートルという場合もある。変態しない原因は、変態に関与するホルモンの量や感受性の低下にあると思われる。

[倉本 満]


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百科事典マイペディア 「アホロートル」の意味・わかりやすい解説

アホロートル

アンビストマ科のメキシコサンショウウオの幼生。メキシコ市付近の湖にすむ。全長10〜18cm。黒色か灰白色。変態しないまま産卵する幼生成熟で有名。米国に移して変態した例もあり,原産地の寒さや水中のヨウ素不足のため甲状腺の働きが抑制されると考えられる。また実験的に甲状腺ホルモンを与えて変態させ得る。
→関連項目サンショウウオ(山椒魚)ネオテニー

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「アホロートル」の意味・わかりやすい解説

アホロートル
Siredon mexicanum; axolotl

サンショウウオ目トラフサンショウウオ科。メキシコサンショウウオともいう。ウーパールーパーの名でも知られる。体長 25cm内外。自然環境下では一生を通じて外鰓がなくなることがなく,またその他の体の構造も幼生によく似ているので幼形成熟のよい例として有名である。しかし,飼育下の状態では変態を完了することがある。環境条件の変わったときに起こるこのような変化は,甲状腺ホルモンのチロキシンによるものと考えられている。メキシコに分布する。

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世界大百科事典(旧版)内のアホロートルの言及

【ネオテニー】より

…生殖器官に比べからだの発育が相対的に遅れるために起こるもので,幼生生殖とは異なる。メキシコサンショウウオAmbystoma mexicanum(アホロートルaxolotlと呼ばれる)は原産地のメキシコの泉や湖ではえらをもち,変態しない状態で生殖するが,1865年にパリの植物園で飼われた個体が変態し,水がとぼしいなどの環境では変態して陸に上がることが知られた。つまり原産地のものは幼生形すなわちネオテニー形であり,これに甲状腺ホルモンを補給すると変態が起こる。…

【ネオテニー】より

…生殖器官に比べからだの発育が相対的に遅れるために起こるもので,幼生生殖とは異なる。メキシコサンショウウオAmbystoma mexicanum(アホロートルaxolotlと呼ばれる)は原産地のメキシコの泉や湖ではえらをもち,変態しない状態で生殖するが,1865年にパリの植物園で飼われた個体が変態し,水がとぼしいなどの環境では変態して陸に上がることが知られた。つまり原産地のものは幼生形すなわちネオテニー形であり,これに甲状腺ホルモンを補給すると変態が起こる。…

※「アホロートル」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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