山椒魚(読み)サンショウウオ

デジタル大辞泉 「山椒魚」の意味・読み・例文・類語

さんしょう‐うお〔サンセウうを〕【山×椒魚】

有尾目のサンショウウオ科・アンビストマ科・プレソドン科両生類の総称。約280種が知られる。成体にも発達した尾があり、四肢が発達。肺および皮膚で呼吸するが、肺を欠くものもある。ほとんど陸生で、止水または渓流卵嚢らんのうを産みつける。日本にはハコネサンショウウオ・カスミサンショウウオなどがいる。はたけどじょう。はじかみうお。あぶらめ。 夏》「―この滝に神代より/青邨
[補説]書名別項。→山椒魚
[類語]大山椒魚

さんしょううお【山椒魚】[書名]

井伏鱒二短編小説。体が大きくなり、岩屋から出られなくなったサンショウウオ悲嘆を描く。大正12年(1923)年の作品「幽閉」を改稿して昭和4年(1929)に発表。昭和60年(1985)、全集への収録時に、著者自身が結末部分を大幅に削り、話題となった。

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精選版 日本国語大辞典 「山椒魚」の意味・読み・例文・類語

さんしょう‐うおサンセウうを【山椒魚】

  1. 〘 名詞 〙 両生類有尾目サンショウウオ科に属する動物の総称。体長一〇~一八センチメートルぐらいで、形はイモリに似ている。体色は黒色黒褐色などで種類によって異なる。各地の湿地にすみ産卵期には水に入る。幼生は外えらで呼吸するが、成体はふつう肺または皮膚で行なう。イモリと異なり、体外受精を行ない卵は卵嚢に包まれる。ハコネサンショウウオ、ヒダサンショウウオなどがあり、多くは日本の特産種。体長一メートルを超えるオオサンショウウオ科のオオサンショウウオを含めていうこともある。肉を労咳(ろうがい)(=肺結核)の薬として用いた。はたけどじょう。はじかみうお。あぶらめ。さんしょうのうお。《 季語・夏 》
    1. [初出の実例]「帰路に中御門へ罷向、鯢之汁有之、仍飯取寄」(出典:言継卿記‐天文二年(1533)二月一〇日)
    2. 「鯢魚(サンセウウヲ)」(出典:和爾雅(1688)六)

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「山椒魚」の意味・わかりやすい解説

山椒魚
さんしょううお

井伏鱒二(いぶせますじ)の短編小説。1929年(昭和4)5月『文芸都市』に発表。処女作『幽閉』(『世紀』1923.7)の改稿作。うっかりしている間に体が肥大して岩屋から出られなくなった山椒魚は、嘆きの果てに性質が悪くなって、たまたま岩屋に紛れ込んだ蛙(かえる)を閉じ込めてしまう。以後、両者は、悪口を言い合いながら対峙(たいじ)すること2年、最後にようやく許し合った。出口のない絶望的な設定のうえに、当時の作者の暗い心象がうかがわれるが、それをユーモラスな筆で包んだ、独特の名品である。なお、1985年に出版された『井伏鱒二自選全集1』においては、最後の許し合いの部分が削除され話題をよんだ。

[磯貝英夫]

『『山椒魚他』(新潮文庫・講談社文庫・岩波文庫)』『『井伏鱒二自選全集1』(1985・新潮社)』

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とっさの日本語便利帳 「山椒魚」の解説

『山椒魚』

井伏鱒二
山椒魚は悲しんだ。彼は彼の棲家である岩屋から外へ出てみようとしたのであるが、頭が出口につかへて外へ出ることができなかつたのである。\(一九二三)

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動植物名よみかた辞典 普及版 「山椒魚」の解説

山椒魚 (サンショウウオ)

動物。サンショウウオ科に属する種類の総称

出典 日外アソシエーツ「動植物名よみかた辞典 普及版」動植物名よみかた辞典 普及版について 情報

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