改訂新版 世界大百科事典 「イイダコ」の意味・わかりやすい解説
イイダコ (飯蛸)
Octopus ocellatus
頭足綱マダコ科のタコ。小型で全長約30cm。マダコとほぼ同じ体型で,胴は卵形で黄褐色から黒褐色。表面は小顆粒(しようかりゆう)で覆われているほか,断続する黒色の縦線がある。頭の背面,眼の間には四角い黄金紋があり,眼の直前の傘膜(さんまく)の上には金色の輪状紋があるのが特徴。産卵期は冬で,200~600個の卵を海底に落ちている貝殻,あるいは瓶や空缶の中に産みつけ母ダコが保護する。40~55日で孵化(ふか)し,1年で成体になる。卵は大きく,長径が1cm弱もある。胴内に卵のつまった雌を煮ると,あたかも米粒がつまっているように見えるところから飯蛸の名がある。北海道南部以南,朝鮮半島,中国沿岸に分布し,半内湾的な環境の水深10mくらいの砂底に好んですむ。アカニシなどの空殻を利用した小型のタコ壺でとられる。ラッキョウや白い陶片を掛針につけ海底をひきずり,これを好物の貝と思って抱きついたところを引き上げる釣りが,秋~春に行われる。美味。
執筆者:奥谷 喬司
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報