ドイツの民族学者。フランクフルト大学教授。レオ・フロベニウスの後継者で、文化形態学派の指導者だった。アフリカことにエチオピアと、東部インドネシアのセラム島で実地調査を行い、なかでもセラム島のウェマーレ人の社会で採集したハイヌウェレ神話は、初期栽培民文化の世界像について彼が構想をたてるきっかけとなった。殺された神の死体から作物が発生したという形式の神話や、それと関連した祭儀の比較研究によって、イェンゼンは、生と死、生殖と殺害、栽培植物、月、女などの相互に意味連関をもつ基本的特徴から構成される、まとまった一つの世界像を再構成し、首狩り、食人俗、成年式などの現象も、この世界像との関連で理解しようとした。この初期栽培民文化の世界像の構想については、批判もあるが、示唆に富む理念型である。
イェンゼンはそのほか神話と儀礼との関係、神観念の諸類型など、民族の宗教について貢献が大きい。主著『殺された神』Die gegötete Gottheit(1966。邦訳『殺された女神』)、『未開民族における神話と祭儀』Mythos und Kult bei Naturvölkern(1951)。
[大林太良 2018年11月19日]
『大林太良他訳『殺された女神』(1977・弘文堂)』
ドイツの物理学者。ハンブルクに生まれる。ハンブルク大学、フライブルク大学に学び、1932年に物理学博士号を取得した。1941年ハノーバー工科大学の理論物理学教授、1949年ハイデルベルク大学の物理学教授になった。そのほか、ウィスコンシン大学、カリフォルニア大学、ミネソタ大学などの客員教授を務めた。1969年にはアメリカのフロリダ州フォート・ローダーデールの名誉市民に選ばれている。
原子核の構造の研究を進め、原子核内に安定に存在する中性子や陽子の数を示すマジック・ナンバー(魔法の数)を理論的に導き、これに基づいた殻模型を提唱した。この業績によって1963年ノーベル物理学賞を受賞した。別に同様の研究を行っていたアメリカの物理学者メイヤーとの同時受賞であった。
[編集部]
ドイツの民族学者で,L.フロベニウス亡きあとの文化形態学派の指導者であり,フランクフルト大学教授であった。アフリカ,ことにエチオピアと東部インドネシアにおいて実地調査を行い,後者では,セラム島ウェマーレ族で多くの神話資料を集めた。神の殺害と,その殺された神の死体から栽培植物が発生するという神話を中心におく初期栽培民文化の世界像についての彼の構想は,セラム島の調査が基礎になっている。また未開宗教一般についても功績が大きい。主著は《未開民族における神話と祭儀》(1951),《殺された神》(1966)など。
執筆者:大林 太良
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…しかし神話の物語る事件が起こったあとには,彼らの大部分は,自分たちが引き起こしたその事件によってはじめて明瞭に定められることになった区別に従って,ただの人間や動物などになり,やがて死なねばならなかったとされている。ドイツの民族学者A.E.イェンゼンは,無文字民族の神話に登場するこのような祖先や動物なども,神話の主人公であるという点から,明らかに神の一種と認めねばならぬと主張した。そしてニューギニアのマリンド・アニム族が,神話の祖先たちを指して用いている呼称をそのまま学術用語にして,彼らを〈デマ神Dema‐Gottheit〉と呼び,ギリシア神話などの不死の神々から区別しようと提唱している。…
※「イェンゼン」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
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