日本大百科全書(ニッポニカ) 「イガ」の意味・わかりやすい解説
イガ
いが / 衣蛾
clothes moth
[学] Tinea translucens
昆虫綱鱗翅(りんし)目ヒロズコガ科に属するガ。アジア、ヨーロッパ、アフリカ、アメリカなど広範囲に分布している。幼虫は毛織物など衣類の害虫で、家屋や倉庫内にすむため、その分布は人為的に拡大される。幼虫は小さな白い蓑(みの)をつくり、中から頭胸部を出して毛織物を食べ、老熟すると蓑を固着させて中で蛹化(ようか)する。幼虫態で越冬し、成虫は春から秋にかけ2、3回出現する。温度(25℃)と湿度(75%)の条件がよければ、1年に6世代を営むことができるという。はねの開張12ミリメートルぐらいの微小なガで、家屋内を飛び回っているのがごく普通にみられるが、一般のガと違って、灯火に誘引されることはない。人間生活が毛皮類などを一定の住み家に保存するようになる前は、野生の獣類や鳥類の巣などで毛や羽毛を食べていたものと考えられるが、現在では屋内生活にすっかり適応してしまった。毛織物の保存には、防虫剤を欠かすことができないが、成虫、幼虫とも光を好まないので、虫干しは防除に有効である。
[井上 寛]