コトバンクはYahoo!辞書と技術提携しています。

イスラム法 イスラムほう Islamic law; sharī`ah

6件 の用語解説(イスラム法の意味・用語解説を検索)

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

イスラム法
イスラムほう
Islamic law; sharī`ah

イスラムの宗教法。アラビア語シャリーアは,「水場への道」転じて「アッラーの道」を意味する。イスラム神学とともに,イスラム教徒の生活を伝統的に支配してきた。イスラム法は最初コーランあるいは預言者マホメットの言行 (スンナ) を基に作られた。

本文は出典元の記述の一部を掲載しています。

出典|ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典
Copyright (c) 2014 Britannica Japan Co., Ltd. All rights reserved.
それぞれの記述は執筆時点でのもので、常に最新の内容であることを保証するものではありません。

知恵蔵2015の解説

イスラム法

イスラムとは、神の意思への服従である。神から言葉を授かると信じられた預言者ムハンマドの生存中は、その教えに従うことがイスラムであった。その死後は、神の意思を判断する手段としてシャリーア(イスラム法)が発展した。シャリーアは、政治などの社会的生活から遺産相続のような個人の生活まで、信徒の全生活を包含する規範。その源は4種に分類される。第1に預言者が授かった神の言葉である聖典クルァーン(コーラン)、第2は伝承されているムハンマドの言行ハディースで、ムハンマドは正しい行いの人であったので、その言行が信徒の模範とされている。第3にイスラム法学者の間の大方の同意であるイジュマー、第4が類推キアースである。シャリーアが信徒を縛り、進歩の妨げになるとの見方もあるが、シャリーアは充分な解釈の余地を残しており、時代の流れに取り残されることはないとの見解も存在する。また、誰がシャリーアを解釈するのかという点についても、特別の教育を受けた一部の有資格者ムジュタヒドのみにその権利があるとの見解と、一般人にも解釈が可能であり、また許されるべきとの意見がある。シャリーアとは元来、「水場に至る道」を意味し、転じて「正しい道」、イスラム法を指すようになった。

(高橋和夫 放送大学助教授 / 2007年)

出典|(株)朝日新聞出版発行「知恵蔵2015」
それぞれの用語は執筆時点での最新のもので、常に最新の内容であることを保証するものではありません。

デジタル大辞泉の解説

イスラム‐ほう〔‐ハフ〕【イスラム法】

シャリーア

出典|小学館 この辞書の凡例を見る
監修:松村明
編集委員:池上秋彦、金田弘、杉崎一雄、鈴木丹士郎、中嶋尚、林巨樹、飛田良文
編集協力:曽根脩
(C)Shogakukan Inc.
それぞれの用語は執筆時点での最新のもので、常に最新の内容であることを保証するものではありません。

百科事典マイペディアの解説

イスラム法【イスラムほう】

シャリーア

出典|株式会社日立ソリューションズ・クリエイト
All Rights Reserved. Copyright (C) 2015, Hitachi Solutions Create,Ltd. ご提供する『百科事典マイペディア』は2010年5月に編集・制作したものです

大辞林 第三版の解説

イスラムほう【イスラム法】

出典|三省堂
(C) Sanseido Co.,Ltd. 編者:松村明 編 発行者:株式会社 三省堂 ※ 書籍版『大辞林第三版』の図表・付録は収録させておりません。 ※ それぞれの用語は執筆時点での最新のもので、常に最新の内容であることを保証するものではありません。

日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

イスラム法
いすらむほう

アラビア語でシャリーアShar‘aという。この語は元来「水場に至る道」を意味した。コーランには、語根shr-‘の動詞、名詞形をあわせて4例(5章48節、42章12節・21節、45章18節)しかないが、そこでは人間には従うべき「道」(シャリーア)があり、それは人間の思い付きや思惑ではなく、神が啓示し「定めた」(シャラアshara‘a)真理として用いられている。人間はただそれを受け入れ、それに服従すること(これが「イスラム」の語の本来の意味)によって救いに至るのである。シャリーアとは「人間の正しい生き方」の具体的表現にほかならない。ただイスラム教では、それは人間の理性や思惑ではなく、神の啓示によってのみ知られるとされる。イスラム教における正義とは、神に服従し、神に従順であることを意味する。[中村廣治郎]

シャリーアの内容と特質

人間はいかなるとき、いかなる場合でも正しく考え、正しく行動しなければならないとすれば、神の正義は、少なくとも理念的には、人間生活の全分野に妥当するものでなければならない。事実、シャリーアは個々のムスリム(イスラム教徒)の「宗教的」生活のみならず、「現世的」生活をも具体的に規制する聖法である。その内容は、浄(きよ)め、懺悔(ざんげ)、礼拝、喜捨(きしゃ)、断食(だんじき)、巡礼、葬儀などに関する「儀礼的規範」(イバーダート)から、婚姻・離婚・親子関係、相続、奴隷・自由人、契約、売買、誓言・証言、ワクフ(寄進財産)、訴訟・裁判、非ムスリムの権利・義務、犯罪・刑罰、戦争などの公私両法にわたる「法的規範」(ムアーマラート)をも含む。そのようなものとしてのシャリーアは、特殊な人に限定されるのではなく、未成年者などを除いて原則として共同体の成員すべてに等しく適用される規範である。イスラム共同体(ウンマ)とは、このシャリーアの理念の地上的表現として意味をもつ。このようにシャリーアは、本質的には信仰者の当然従うべきものとしての道徳的義務であるが、そこには実定法的内容のものが多い。そして現実の共同体の秩序維持のために、それは実定法として強制される必要があった。イスラムの政治への志向は、シャリーアのこの実定法的性格とその包括性に由来する。
 ところで、このシャリーアの基本となるコーランの規範のうち、儀礼や個人生活に関する部分は具体的かつ詳細であり、解釈の余地はあまりない。しかし、それ以外の分野では一般的原則や基本原理を述べるにとどまり、具体性に乏しい。それだけにこの部分に関するシャリーアの実際的適用は環境や社会的利益の変化に応じてさまざまに解釈され、けっして一律ではない。したがって、現実に機能していたのは家族法的側面が主であった。[中村廣治郎]

法源

シャリーアは神の命令(コーラン)の具体的体系的表現として絶対不変とされるが、他方では人間が解釈したものとして歴史的である。シャリーアが古典的な形で成立し、法解釈の古典理論がシャーフィイー(767―820)によって大成されるまでには2世紀近い年月を要した。この理論によれば、イスラム法の主要法源としてコーラン、スンナ(預言者の範例)、イジュマー(共同体の合意)、キヤース(類推)の四つが定められた。これは神の意志を探る法解釈の手続を四つ述べたものである。すなわち、あらゆる行為に対する善悪の判断において、まずよりどころにすべきはコーランであることはいうまでもない。もしコーランの明文に規定がない場合、またはコーランの明文があいまいであったり、一般的であったりする場合には、スンナに依(よ)る。これはハディース(預言者の言行として伝えられる伝承)に示された預言者の「範例」である。もしスンナにも規範をみいだせない場合には、イジュマーに依る。これは共同体を代表し、法解釈に堪能な法学者(ムジュタヒド)の「合意」をさす。もしイジュマーにも該当する規範をみいだせない場合には、キヤースに依る。これは、コーランやスンナのなかに当面の事件に類似の問題をみいだし、それに対して示されている判断からする「類推」のことである。以上の四つが「法源」とよばれる。[中村廣治郎]

四法学派の成立

イスラム法とは、これらの法源から演繹(えんえき)された人間の生活全般にわたる行為規範である。とはいえ、これら四つの法源のおのおのについて、さまざまな解釈の余地が残されている。たとえば、スンナについてみても、信憑(しんぴょう)性においてさまざまにランク分けされているハディースをどのランクまで採用するかで結論は違ってくる。同様にキヤースについてみても、何を類推の基本にするかで出てくる結論が異なる。また、スンナを多用すれば、それだけキヤースを用いる余地は少なくなる。基本的な点はともかく、細部の点についてはこうして結論の違いが生まれ、それがさまざまな法学派を生んだ。今日ではアブー・ハニーファを祖とするハナフィー学派、マーリク・イブン・アナスを祖とするマーリキー学派、シャーフィイーを祖とするシャーフィイー学派、アフマド・イブン・ハンバルを祖とするハンバリー学派の四法学派がいずれもスンニー派の公認学派として残っている。シーア派にもスンニー派とは別の法学派(ジャーファリー派)がある。[中村廣治郎]

イスラム法の運用と現状

イスラム法を具体的に適用するのは、カーディーとよばれる裁判官である。彼らは政府によって任免され、自己の学派の法規定に従って審理し判決を下す。彼らが解決困難な大きな事件や新しい問題に直面した場合には、ムフティーとよばれる法解釈の権威に判断(ファトワー)を求める。近代の法改革によって多くのイスラム諸国で新しい法典が導入されてくると、シャリーア裁判所は縮小され、カーディーの活動も制限されてきた。[中村廣治郎]
『遠峰四郎著『イスラム法入門』(1964・紀伊國屋書店)』

出典|小学館 日本大百科全書(ニッポニカ) この辞書の凡例を見る
(C)Shogakukan Inc.
それぞれの解説は執筆時点のもので、常に最新の内容であることを保証するものではありません。

世界大百科事典内のイスラム法の言及

【アッバース朝】より


[成立]
 アッバース朝の成立をもたらしたものは〈アッバース朝革命〉と呼ばれている大規模な組織運動であった。ウマイヤ朝(661‐750)時代,幾度かの内乱や反乱が起こったが,そうしたウマイヤ家の支配に反抗する者たちの間から,イスラム教団国家の最高責任者として,イスラム法を施行できる唯一の資格ある者は,預言者ムハンマドの家族,すなわち〈ムハンマド家〉出身者でなければならず,その点ウマイヤ家は資格なしとする思想がしだいに広がった。ムハンマドの叔父アッバースの子孫であるアッバース家は,この思想を利用してウマイヤ朝打倒の地下運動を起こし,最高指導者が誰であるか名前を伏せたまま秘密の宣伝者(ダーイー)を各地に派遣した。…

【裁判】より

…イスラムの法律制度では,原則として裁判は1人の裁判官によって行われる。裁判官は紛争を解決するために,証言や証拠を集め,イスラム法(ハディースシャリーア)に基づいて事件に判決を下す。判決は,コーラン,イジュマー(合意)を根拠にして下され,これらを適用できない場合にはキヤースqiyās(類推)によって裁量した。…

【シャリーア】より

…〈イスラム法〉〈聖法〉ともいう。この語は元来,〈水場に至る道〉を意味した。…

※「イスラム法」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社日立ソリューションズ・クリエイト
All Rights Reserved. Copyright (C) 2015, Hitachi Solutions Create,Ltd. 収録データは1998年10月に編集製作されたものです。それぞれの用語は執筆時点での最新のもので、常に最新の内容であることを保証するものではありません。また、本文中の図・表・イラストはご提供しておりません。

イスラム法の関連キーワードイスラム哲学シャリーアイスラム帝国汎イスラム主義イスラム債券イスラム聖戦機構スクークイスラム諸国会議ゴルトツィーハーダール・アルイスラーム

今日のキーワード

大統領補佐官

各種政策の立案その他に関し,側近として大統領に助言する役職だが,実質上はブレーン,顧問として多面的な役割を担う。憲法で定められた唯一の行政責任者である合衆国大統領は,強大な権力を持つにもかかわらず,議...

続きを読む

コトバンク for iPhone

イスラム法の関連情報