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イブン・トゥファイル Ibn Ṭufayl

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

イブン・トゥファイル
Ibn Ṭufayl

[生]? ガディス
[没]1185/1186. マラケシュ
スペインのイスラム哲学者。ラテン名 Abubacerムワッヒド朝宮廷の侍医をつとめた百科全書的学者。 13世紀ラテン世界には,イブン・ルシュドの批判を通して,可能的知性を想像力と同一視した人としてのみ知られたが,15世紀にラテン訳の出た主著『ヤクザーンの子ハイイ』 Risālat Ḥayy ibn Yaqẓānは哲学小説である。完全な孤独に生きる男が,自己陶冶によって神との神秘的合一の理想に達するまでを描き,それが大衆のイスラムと相いれないものであるとの悲観的結論を出している。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

イブン・トゥファイル
いぶんとぅふぁいる
Ab Bakr ibn Tufayl
(?―1185)

中世スペインのアラビア語著述家、哲学者。ヨーロッパではアブバケルAbubacerともよばれる。グラナダ近くのワーディー・アーシュ(カディス)で生まれ、グラナダで医学、数学、哲学などを修めてから役職につき、のちに学者として名をなしてモロッコのアル・ムワッヒド朝宮廷に迎えられ、この地で没した。著作としては『ハイイ・イブン・ヤクザーン』(目覚める者の息子、生ける者)しか残っていないが、この作品は文学史および思想史の両面から高く評価されている。ハイイ・イブン・ヤクザーンというのは主人公の名で、幼くして孤島にひとり捨て置かれたが、アッラーの加護のもとに成育し、植物や動物についての知識を得、長ずるに及んで自然の摂理を知り、哲学的思索をするに至るという、一種の哲学的小説である。大哲学者イブン・シーナー(アビケンナ)に同名の小品があり、これを構成し直したものと考えられる。全体にイスラム神秘主義の色彩が感じられる。1349年にヘブライ語に訳されたといわれるが、中世ヨーロッパには知られていなかった。1671年にイギリスのエドワード・ポコックEdward Pocock(1604―1691)がラテン語に訳して広く読まれ、これをもとにヨーロッパの各国語に訳された。デフォーはこれを読んで『ロビンソン・クルーソー』の着想を得た。また成長小説的な内容から、ルソーの『エミール』ともしばしば対比される。[矢島文夫]

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