日本大百科全書(ニッポニカ) 「インスリン抵抗性」の意味・わかりやすい解説
インスリン抵抗性
いんすりんていこうせい
insulin resistance
膵臓(すいぞう)から分泌されるインスリン(血糖値を下げる作用をもつホルモン)の標的組織である肝臓や脂肪細胞、骨格筋の感受性が低下し、インスリンの作用が十分に発揮されない状態。あるいはインスリンの濃度に見合った作用が得られない状態。
インスリン抵抗性は、2型糖尿病の発症に関与するきわめて重要な病因因子である。
〔疫学・病因(危険因子)〕
遺伝、肥満、運動不足、高脂肪食、ストレスが危険因子となる。
〔検査・診断〕
早朝空腹時の血中インスリン値が15μU/mL以上を示す場合、インスリン抵抗性があると判断される。また、その他の指標としてHOMA-IR(homeostasis model assessment for insulin resistance)が用いられている。HOMA-IRは、空腹時インスリン値(μU/mL)×空腹時血糖値(mg/dL)/405の式から求められ、1.6以下は正常、2.5以上はインスリン抵抗性ありと考えられる。
〔治療〕
食事療法や運動療法がメインとなる。
食事療法では、脂肪や糖質を多く含む食事を減らすことが重要である。また、運動するとインスリンが効きやすくなるため、運動が可能な場合には積極的に運動療法を行う。
2型糖尿病で薬物療法が必要な場合は、肝臓・腸・筋肉・脂肪細胞に働いてインスリン抵抗性を改善し血糖値を下げる効果のある内服薬(血糖降下薬)を使用することもある。
なお、2型糖尿病の治療ではインスリン製剤が用いられることもあるが、インスリンは成長因子であるため、体重を増やす働きがあり、結果としてインスリン抵抗性をさらに悪化させる可能性が高い。インスリン製剤による治療が必要な場合、血糖を下げるために安易にインスリン注射量を増やすのではなく、食事・運動療法もきちんと行い、必要最低限の注射量を使用するようにする。
[和栗雅子 2024年10月17日]