身体全体またはその一部を動かして,症状の軽減とか機能の回復を目ざす療法で,治療体操,機能訓練などともいう。筋力増強,麻痺回復促進訓練,関節可動域回復訓練,歩行訓練,心肺機能改善訓練などが含まれる。筋力増強は実際の筋力(瞬発力)と筋持久力の増大を目標とするが,一般にプログラムとして用いられるのは漸増抵抗運動である。これは,まず軽い抵抗量(たとえば最大抵抗量の10%)から始めて,全関節可動域にわたって10回挙上運動を行う。この抵抗は10%ずつ漸増して最大抵抗運動10回で終了する。各運動の間に休息を置き,毎週5日間実施するが,筋力増強が得られれば,翌週にはこの新しい抵抗量に変えて訓練を続ける。運動の種類には,このように関節運動を伴う等張性筋収縮運動のほかに,関節を動かさずに抵抗運動を行う等尺性筋収縮運動,また関節運動の速度を一定にする等速度性運動がある。
関節可動域の改善訓練は,中枢神経系,末梢神経,あるいは筋・骨格系の病変により関節拘縮を生じたものに対して行われるが,またその予防法としても実施される。その方法には,他動運動,自動介助運動,自動運動,抵抗運動などがある。関節拘縮は歩行,起立保持,移動,その他の日常生活での動作に影響するところが大きい。
中枢神経系の障害に対する運動療法として,たとえば脳卒中による片麻痺に対し,弛緩期の治療は関節の拘縮や変形を防止する関節可動域訓練が中心になるが,途中で痙性(けいせい)と自動運動が出現してくると,運動パターンの再教育,知覚認知の再教育に重点を置く。知覚認知の再教育はまず他動運動を通して行われ,このとき患者は運動感覚を呼び覚まされる。次いで自動介助運動により自分で患肢を動かそうと努力する。下肢の場合には,とくに荷重による再教育と,体幹を傾斜させて行うバランス訓練,下肢全体としてのパターン訓練等を行う。
執筆者:岩倉 博光
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
運動を手段に用いる治療法。リハビリテーション医療における身体機能回復のための運動訓練のほか、糖尿病や高血圧、心臓病などの治療のために食事療法や薬物療法とあわせて処方されるものがある。
糖尿病治療のためには、エネルギーの摂取・消費バランスの改善を目的に、食事療法や薬物療法と併用して運動療法が処方される。血糖降下薬インスリンの感受性を高める効果があり、結果として血糖値を下げ肥満改善にも有効である。高血圧治療の目的でもほかの療法と組み合わせて処方される。
運動療法は、狭心症や心筋梗塞(こうそく)など循環器疾患の悪化や再発を予防し、快適な生活を送るための総合的なプログラムである「心臓リハビリテーション」にも取り入れられている。心臓リハビリテーションは、学習指導(心臓病に対する正しい知識を教授する講義、食事療法や禁煙指導など)、カウンセリング(社会復帰や職場復帰へのアドバイス、不安やうつ状態についての相談)と運動療法で構成され、運動療法は(1)運動負荷試験による最適な運動強度・運動時間の決定、(2)専門スタッフの監視下でのトレーニング、(3)在宅での運動療法の指導、という流れで行われる。
[編集部]
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…水は比熱が高いために熱を吸収したり逆に熱を与えるのに時間を要するが,この性質を人体に応用したものに,温水を用いる温熱療法,冷水を用いる寒冷療法などがある。また,水の温度,浮力,抵抗,水圧などが運動療法に利用される。場合によっては水蒸気にしたり氷にして用いることもあり,人体の局所に用いることもあれば全身浴として治療することもある。…
…以上はすべて今日の理学療法に含まれるが,さらにリハビリテーション医学において運動機能を回復させる,運動の再教育という目標も加わることになった。すなわち理学療法は,物理療法と運動療法を組み合わせて,運動障害の改善,治療の分野に確固たる地位を占めるに至ったのである。 理学療法の原理は,(1)組織,循環の維持および改善,(2)関節可動域の維持および改善,(3)筋力の維持および改善,(4)痛みや浮腫,痙攣(けいれん)などの緩和をめざした緩解治療,(5)原疾患の合併症として栄養障害や萎縮,癒着や拘縮などの予防,(6)全身状態の改善,(7)種々の器械や装具,自助具の使用による運動性の維持および改善,である。…
※「運動療法」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
一度利用した製品を捨てずにそのまま再使用すること。ごみの削減に重要だとされる「3R」の一つで、衣類・服飾品や家電などさまざまな品目が取り扱われている。リユース商品の専門店やイベント、フリーマーケット...