アメリカの代表的な写真家。イリノイ州に生まれる。高校を卒業後,カリフォルニア州グレンデールに移り巡回写真師となったが,その仕事にあきたらずイリノイに戻って本格的に写真を学んだ。1911年再びグレンデールに帰り営業写真館を開業。15年に開かれたサンフランシスコの万国博で近代美術に接してから,新しい写真についての関心が呼び起こされ,創造的な写真についての探究が始まる。それまでの軟焦点描写などによる絵画主義的な写真ではなく,精密な描写と客観に徹するまなざしで物自体の実在に迫ろうとする写真によって,新しい方向を切り開こうとした。22年そうした写真による個展をメキシコ市で開き,大きな反響を呼んだ。23年メキシコに移住。シケイロス,オロスコなどの画家たちと親しく交わりながら,作品の制作を続けた。26年グレンデールに戻り,代表作の一つといわれる貝殻や野菜のクローズアップを撮る。29年にはライフワークともいうべきポイント・ロボスの連作を開始した。32年彼の写真の方針に共感するA.アダムズ,I.カニンガム,ファン・デイクらとともに〈f・64グループ〉を結成。f・64とはレンズの絞りを最小限度に絞って,シャープな写真を撮るという象徴的な意味である。37年から38年にかけてグッゲンハイム財団の奨励賞を得て,その賞金によってアメリカ西部を撮影した成果は《カリフォルニアと西部地方》(1940)として刊行された。46年ニューヨーク近代美術館で大回顧展が開かれたが,以後は持病のパーキンソン病が悪化して,ほとんど制作は不可能な状態であったという。なお,ウェストンの生活と制作ぶりを撮った映画が47年と57年の2本あり,後者の《裸の眼》は,ベネチア国際映画祭などで受賞している。
執筆者:大辻 清司
アメリカの電気技術者,企業家。実用電気計器の完成者として著名である。イギリスに生まれ,医学を学んだのち,1870年にアメリカのニューヨーク市に移った。まず写真用化学薬品の会社につとめ,次いで電気めっき業に従事した。めっき用電源の電池を発電機でおきかえる可能性に興味をもち,72年にこのための発電機製造を始めた。アーク炉をも手がけたことから,77年にはアーク灯照明システムを完成した。同年にこれら発電機,アーク灯を製造するウェストン発電機社Weston Dynamo Electric Machine Co.を設立した。めっき用発電機ではおおいに成功したが,アーク灯システムではC.F.ブラッシュに及ばなかった。これらの過程でウェストンは計測の必要性を痛感し,電気計器の自作を始めた。88年にはウェストン電気計器会社Weston Electrical Instrument Co.を設立,計器の商業生産に乗り出し,実用性のあるガルバノメーター,可動コイル形指示計器,可動鉄片形指示計器,ダイナモメーター,積算電力計を製造した。89年には抵抗温度係数がゼロに近いマンガニン線を発明し,92年にはウェストン標準電池を完成した。また,アメリカ電気学会American Institute of Electrical Engineersの創立メンバーでもあった。
執筆者:高橋 雄造
イギリスの宣教師,日本近代登山の父といわれる登山家。ケンブリッジ大学卒業。スイスで登山を行った後,1888-94年,1902-04年,12-14年の3回来日。神戸と横浜に宣教師として滞在中,日本アルプスや富士山など全国の山々に登り,また小島烏水らに日本山岳会創設をすすめ,1910年日本山岳会最初の名誉会員に推された。17年には日本アルプスの探検的登山に対し,イギリス地学協会からバック・グラント賞を授与された。著書には日本アルプスを世界に紹介したとして名高い《日本アルプスの登山と探検》(1896)のほか《極東の遊歩場》(1918)などがある。37年日本山岳会はウェストンのレリーフを上高地梓川河畔につくり,戦時中一時除かれたが戦後再び建設。毎年6月〈ウェストン祭〉が,日本アルプスの山開きとして行われている。
→登山
執筆者:徳久 球雄
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(武田文男)
出典 朝日日本歴史人物事典:(株)朝日新聞出版朝日日本歴史人物事典について 情報
イギリス人牧師。日本近代登山の父といわれる登山家。ケンブリッジ大学を卒業。1889~94年、1902~05年、1911~15年の3回、神戸と横浜に牧師として滞在中に、日本アルプスや富士山、それに九州などの山々に登り、1896年『日本アルプス・登山と探検』をロンドンのJ・マレー社から発行、日本アルプスの名を世界に広めた。また小島烏水(うすい)らと日本山岳会結成のために尽くし、1910年(明治43)日本山岳会最初の名誉会員となる。17年イギリス王立地学協会からも日本アルプス開拓の功によりバック・グランド賞を受賞。イギリス山岳会会員。著書はほかに『極東の遊歩場』『Japan』などがある。37年北アルプス上高地の梓(あずさ)川畔にレリーフがたてられ、第二次世界大戦後は毎年6月の第1日曜日に「ウェストン祭」が行われる。
[徳久球雄]
『岡村精一訳『極東の遊歩道』(1984・山と渓谷社)』
アメリカの写真家。大型カメラによる精緻(せいち)で即物的な描写を通じて、造形的かつ抽象的に事物の実在感を表現し、近代写真に多大の影響を残した。イリノイ州ハイランドパークに生まれる。18歳でカリフォルニアに移り写真を始め、初期には軟調なポートレートを撮っていたが30歳代にのちに知られる作風に移行した。1922年から3年間メキシコに住み、リベラやシケイロスらの国民的芸術家に接し、精神面での影響を受け、極限まで精密に写す作風を確立した。32年にはポール・ストランドやアンセル・アダムズらと「f/64」グループを結成、「ストレート・フォト」(純粋写真)の究明を目ざした。代表作に、30年代の野菜や貝殻をモチーフとしたもの、その後の一連のヌード、カリフォルニア州のポイント・ロボス海岸や「死の谷」の砂漠で撮った自然の形象をテーマにしたシリーズなどがある。
[平木 収]
アメリカの発明家。イングランド西部のシュロップシャーに生まれ、医学を修め、1870年アメリカに渡った。物理学や化学への興味から、ニッケルめっきの会社に入り、そこでめっき用電源としてダイナモを利用することを思い付き、独立して会社を設立し、発電機の改良を手がけた。電流測定用に安定度の高いカドミウム電池を開発した。これはウェストン標準電池として広く知られている。
[高橋智子]
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
出典 日外アソシエーツ「367日誕生日大事典」367日誕生日大事典について 情報
…アマチュアの写真愛好者にあっては,今日でもそれは一つの顕著な傾向であるといってよいかもしれない。一方,異境の風土や未踏の地の写真を,こうした定式化した芸術写真の脈絡から果敢に踏み出して撮影することも,写真表現の種々の面での独自性の認識が一般化するにつれ,しだいに行われるようになり,その際立った例としては,1930年代を中心とするE.ウェストンやA.アダムズの風景写真をあげることができる。両者とも描写の克明なこと,トーンのととのえ方,構成の仕方などにおいて,絵画の影響からまったく脱却した写真独自のみごとな画像を作り出している。…
… 高峻で雄大な御嶽山の山容は古来山岳信仰の対象となり,最高峰剣ヶ峰に御嶽神社奥社があり,祠や石像が安置されている。御嶽信仰の盛期は江戸時代の1790年代以降であったが,明治に入って女人禁制の解除,中央本線の開通(1910)や中山道の改修などのほか1891年のW.ウェストンの御嶽登山が契機となって登山にスポーツの要素が多くなり,多くの登山者がこの山を訪れるようになった。とくに王滝口七合目の田ノ原(2200m)までバス路線が開通し(1967),観光地としての性格は一段と強まった。…
…1970年以降高峰の初登は世界的にもほとんど終わったが,登山者にとってはより困難な登山,すなわち無酸素(〈R.メスナー〉の項を参照),フリークライムなどの技術の展開を求めるとともに,世界各国の共同登山もさかんになり,また女性や高年齢者,障害者の登山等もさかんになってきた。 日本で近代登山の風潮が芽生えたのは,1894年地理学者志賀重昂が《日本風景論》を書き,〈登山の気風を作興すべし〉と説いたこと,また1888年に来日したイギリス人宣教師W.ウェストンの働きであった。小島烏水は1902年槍ヶ岳に登り,下山後ウェストンの著《日本アルプスの登山と探検》(1896)を読んで感激し,ウェストンと会い,武田久吉らとも協力して1905年に初めての登山団体として日本山岳会をつくった。…
…中部地方にある三つの急峻な山脈,北アルプス(飛驒山脈),中央アルプス(木曾山脈),南アルプス(赤石山脈)を合わせた名称。アルプスの呼称はヨーロッパ・アルプスにちなむもので,イギリスの鉱山技師ゴーランドWilliam Gowlandが《日本案内》(1881)に用いたのが始まりであるが,この呼称を有名にしたのは宣教師で登山家であったW.ウェストンと,明治の登山家小島烏水(うすい)の功績に帰する。ウェストンは1896年に《日本アルプスの登山と探検》をロンドンで出版して,日本アルプスを世界に紹介し,その森林美と渓谷美をたたえた。…
※「ウェストン」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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