電子機器や実験装置などの電圧の校正用に用いられる精度の高い起電力を示す一次電池。一定の温度で一定の値の起電力を示すカドミウム標準電池が一般に用いられている。ウェストンによって発明されたためウェストン標準電池ともよばれている。負極にカドミウム‐10%アマルガムCd(10%Hg)を、正極に水銀Hgと硫酸水銀(Ⅰ)Hg2SO4を、そして電解液には硫酸カドミウム・8/3水和物CdSO4・8/3H2Oの飽和水溶液を用いたもので、以下のように示すことができる。
Cd(10%Hg)|CdSO4・8/3H2O
|CdSO4(H2O)|Hg2SO4|Hg
起電力は20℃でE20=1.01830±1×10-5ボルトである。温度変化による起電力差はきわめて小さいが、国際的には0~40℃の間では下記に示すボルフの式で補正することになっている。
Et=E20-4.06×10-5(t-20)
-9.5×10-7(t-20)2
+1×10-8(t-20)3
ここでEtは温度t℃における起電力である。
純度の高い薬品を用い、注意深く正確に組み立てれば長期の安定性はよい。また校正時に電流を流さないこと、直射日光を避けること、振動を与えたり転倒させたりしないことに注意して取り扱えば、経年変化は1年あたり数マイクロボルト(μV)以下に抑えることができる。
なお、カドミウム標準電池の硫酸カドミウムのかわりに硫酸亜鉛ZnSO4を用いたクラーク電池が標準電池として用いられたこともあったが、温度係数が比較的大きいため、現在ではほとんど使用されていない。
1970年代からジョセフソン電圧標準によって電圧の標準が確立されているので、標準電池は二次標準としての役割をもつものとなっている。
[浅野 満]
『電池便覧編集委員会編『電池便覧』(2001・丸善)』
電圧の一定性にすぐれ,起電力測定の標準に用いられる電池。現在最も広く用いられている標準電池はカドミウム標準電池(ウェストン電池ともいう)で,つぎのような構造をもっている。
Cdアマルガム(10%Cd)| CdSO4・8/3H2O結晶および飽和溶液| Hg2SO4(飽和)|Hg ⊕
この電池の起電力E(単位V)と温度t℃との関係は次式で与えられる。
E=1.01864-4.06×10⁻5(t-20)-9.5×10⁻7(t-20)2+1×10⁻8(t-20)3
カドミウム標準電池を用いて正確な電圧を得るためには,(1)比較的大きな電流(1μA以上)をある程度以上連続的に流さない,(2)温度をあまり上げ下げしない(温度変化に対するヒステリシスが残る),(3)倒したり,機械的衝撃を与えたりしない,などの注意が必要である。なお,カドミウム標準電池のカドミウムを亜鉛に,硫酸カドミウムを硫酸亜鉛に変えた標準電池をクラーク電池Clark cellといい,起電力E(単位V)と温度t℃との関係は次式で与えられる。
E=1.4325-1.19×10⁻3(t-15)-7×10⁻6(t-15)2
クラーク電池はカドミウム標準電池にくらべて温度係数が大きいので,あまり用いられない。
執筆者:笛木 和雄
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電位差測定の標準として用いられる電池.製作が容易で,その起電力が,長期間保存しても,また多少の電流(1 μA 程度以下)を流しても変化せず,温度による変化が正確に知られているが,その温度係数が小さいことも必要である.実用になっているものには,カドミウム標準電池(ウェストン電池)やクラーク電池などがある.
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…109~1014Ωではカーボンコンポジョン皮膜をガラス封入,さらに金属容器に入れ,ガード端子Gをもつ図1-bの3端子の構造とする。
[標準電池]
E.ウェストンによって1892年に発明されたカドミウム標準電池が電圧の標準として用いられる。電解液として用いる硫酸カドミウム溶液の飽和度により飽和形と不飽和形,液の酸性度により,中性電池,酸性電池に分けられる。…
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出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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