ウォラストン(読み)うぉらすとん(その他表記)William Hyde Wollaston

デジタル大辞泉 「ウォラストン」の意味・読み・例文・類語

ウォラストン(William Hyde Wollaston)

[1766~1828]英国化学者・物理学者白金鉱石の分析を通して新元素パラジウムロジウム発見。また、可鍛性かたんせい白金の製法を考案し、極細の白金線(ウォラストン線)の作成に成功するなど、多岐にわたる業績をあげた。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ウォラストン」の意味・わかりやすい解説

ウォラストン
うぉらすとん
William Hyde Wollaston
(1766―1828)

イギリスの化学者、物理学者。ノーフォーク県の東ディーハム生まれ。ケンブリッジ大学で医学を修め、1792年に開業するが、1800年には化学に転向し、白金の可鍛状態をつくる研究を始める。研究中、白金鉱石の分析により新元素パラジウム(1802)、ロジウム(1804)を発見。1805年には可鍛性白金の製法を考案し、極細の白金線(ウォラストン線)をつくり、販売して大きな利潤をあげた。1820年には王立協会会長となる。

 理論化学においては、ドルトン原子論に対する彼の態度が興味深い。1808年いち早く、塩類の構成成分がドルトンの倍数比例の法則に従うことを示し、原子論の受容に貢献したが、数年後、分子中の原子数決定法には根拠がなく、原子の実在にも疑問があるとして、原子量のかわりに「当量」の採用を提案した。さらに、酸素を10とする各元素の当量を計算し、対数目盛りによる計算尺で示した。原子論に対するこの実証主義的懐疑と当量概念は、のちに彼が原子論に復帰したにもかかわらず大きな影響を及ぼし、19世紀なかばまで化学界に混迷をもたらす原因の一つとなった。

 他の分野においては、結晶学における反射測角器の改良、食塩型の結晶構造の提唱、光学における収差をなくすようにした顕微鏡用複合レンズウォラストンレンズ)やメニスカスレンズ、カメラ・ルシダなどの器具の改良、太陽スペクトル中の暗線(後のフラウンホーファー線)の発見、生理学における腎臓(じんぞう)結石の基本成分の決定、高音聴覚における個人差の発見などがある。

[肱岡義人]

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改訂新版 世界大百科事典 「ウォラストン」の意味・わかりやすい解説

ウォラストン
William Hyde Wollaston
生没年:1766-1828

イギリスの化学者,生理学者。ケンブリッジ大学で医学を学び,しばらく開業していたが,1800年に本来興味をもっていた化学の研究に転じた。02年にパラジウムを,2年後にロジウムを発見した。また,可鍛性のある白金を得る精製法を確立し,光学機器の十字線などに用いられるごく細い白金線(ウォラストン線)を作った。精度の高い反射式ゴニオメーター(測角器)を作り結晶学に貢献,さらに,方解石の直角プリズムを2個はり合わせた偏光プリズム(ウォラストンプリズム)や,2枚のレンズをはり合わせて収差を除いたウォラストンレンズなど数多くの光学機器の改良や発明があり,このほかにも太陽スペクトルの黒線を観測したり,アミノ酸の一種であるシスチンを発見するなど,彼の業績は広範囲にわたっている。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ウォラストン」の意味・わかりやすい解説

ウォラストン
Wollaston, William Hyde

[生]1766.8.6. ノーフォーク
[没]1828.12.22. ロンドン
イギリスの化学者,物理学者。ケンブリッジ大学で医学を修め (1793) ,1797年開業したが,学問的関心は物理学,化学,天文学,植物学の多岐にわたった。 1804年可鍛性の白金を得る方法を開発して,タングステン,モリブデンなど遷移金属の精錬,加工の道を開き,その後の化学,産業の発展に重大な影響を与えた。またその過程で,03年パラジウムを,04年ロジウムを発見した。ほかにも反射測角器,偏光複像プリズム (ウォラストンプリズム) ,無収差レンズなどの発明,太陽スペクトル中の黒線の発見 (1803) ,炭素原子の四面体構造の示唆,アミノ酸シスチンの発見など,業績は化学,物理の広い範囲にわたった。 1794年ロイヤル・ソサエティ会員。

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百科事典マイペディア 「ウォラストン」の意味・わかりやすい解説

ウォラストン

英国の物理学者。初め医師。きわめて細い白金線(ウォラストン線)を作る方法を発見後,物理学,化学の研究に転じ,電流やスペクトルを研究,パラジウム(1803年),ロジウム(1804年)を発見,反射測角器,方解石の直角プリズム2個をはりあわせた偏光プリズム(ウォラストン・プリズム),2枚のレンズをはりあわせて収差を除いたウォラストン・レンズなどを発明。

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