太陽スペクトルに見られる暗線(吸収線)。ドイツの光学機器開発者であったフラウンホーファーにちなむ名称である。1802年、ウォラストンは太陽スペクトル中に暗線を見つけていた。その後、分光器にコリメーターを導入し、吸収線を詳しく観測できるようにしたフラウンホーファーは、1814年に太陽スペクトル中に多数の明瞭な暗線があることを発見した。高温ガスと観測者とのあいだに低温ガスがあると、低温ガスを構成している原子やイオンなどの粒子が、それぞれ固有の波長の光を吸収するので吸収線が生じる。
さらに、吸収する粒子数が多ければ吸収線も強く現われるので、フラウンホーファー線を調べることにより、太陽大気中に存在する元素の種類や存在量がわかる。これにより、太陽大気のガスの成分は質量比で水素が70.7%、ヘリウムが27.4%、その他の元素は全部で1.9%であることがわかった。さらに、吸収線の輪郭は、粒子運動や磁場により広がるので、輪郭を調べることにより、光球や彩層のガスの運動や温度や磁場の強さの情報も得られる。フラウンホーファーの観測から太陽にはわずかではあるが金属元素が存在することが判明し、太陽は第一世代の恒星ではなく、第二世代か第三世代の星であると考えられている。
[日江井榮二郎]
太陽光の連続スペクトル中にある黒線.1814年,J. Fraunhoferによって発見されたのでこの名がつけられている.太陽から出た連続スペクトルの光が地球に達するまでに,太陽周辺の気体や地球の大気圏の気体によって選択的に吸収されるために生じる吸収線である.Fraunhoferは,主要な吸収線に赤いほうからA,B,C,…,a,b,c,…などの記号をつけた.NaのD線はよく知られている.このほか,B線とよばれる O2 の帯スペクトル,C線とよばれる水素原子の Hα 線などがある.フラウンホーファー線のうち,地球大気による吸収線は,太陽の天頂距離による通過大気層の変化によって,その吸収強度が変化する.したがって,太陽大気による吸収線とは区別できる.たとえば,B線は地球大気中の酸素によるものである.フラウンホーファー線は数万本に及び,それらは波長,強度によって分類されている.[別用語参照]太陽スペクトル
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報
太陽光を分光器を通して見ると,連続スペクトルの中に,ところどころに暗線が見られる。これは連続的なスペクトル分布をもつ太陽光が,太陽大気,あるいは地球大気中にある気体原子,分子によって,共鳴的に吸収されることによって生ずる。ドイツのJ.フラウンホーファーが最初にこれを発見したことからこの名がある。現在では数万本に及ぶ吸収線が見いだされている。なかには輝線となって現れるものもある。おもなものは,H,He,Fe,Na,Caなどの原子および地球大気(O2などの分子)の可視域の吸収線に同定されており,表に示すような記号が定められている。
執筆者:清水 忠雄
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出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…太陽光を分光器に通して7色に分け詳しく調べて見ると,連続光の中に多数の暗線が見える。これをフラウンホーファー線という。高温の下層からの光を,低温の上層にある原子がその特有の波長で吸収するために暗線が生ずるのである。…
… 地球表面で受ける太陽放射のスペクトルの第2の特徴は,その中にたくさんの吸収線や吸収帯があることである。可視部に見られる多くの吸収線はいわゆるフラウンホーファー線で,これは太陽大気中での吸収によるものである。赤外部に見られるたくさんの吸収帯は,水蒸気によるものがいちばん強く,ほかに二酸化炭素,酸素,オゾンなどによるものもあるが,比較的弱い。…
… さらに細かい波長に分けて太陽光を調べて見ると,太陽スペクトルには連続した光(連続スペクトル)の間に多数の暗線が認められる。これを吸収線,または発見者の名をとってフラウンホーファー線という。これらの吸収線は図2に示すように各種の原子やイオンに特有の波長を示している。…
※「フラウンホーファー線」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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