ウルカギナ(その他表記)Urukagina

改訂新版 世界大百科事典 「ウルカギナ」の意味・わかりやすい解説

ウルカギナ
Urukagina

前24世紀前半のシュメールの複合都市国家ラガシュの支配者。正しくはウルイニムギナUruinimgina。治世2年目から王(ルガル)を称す。史上最初の社会改革者,立法者。7年の成功した治世の後,隣接都市ウンマの支配者でのちにウルク王となってシュメール,アッカド地方を平定したルガルザゲシに敗れた。王の治世はいわゆる〈改革碑文〉などの王碑文のほか,首都ギルスのバウババ)女神をいただく組織の経営に関して,多数の行政・経済文書を残した。〈改革碑文〉によれば,王は支配者やその高官たちが軍隊を背景に,都市の神殿やその管理者たちを圧迫することを廃し,また有力者や中堅層が隷属平民寡婦孤児などの弱者家屋ロバの子を安値で買い入れたり,その所有の果樹園の樹木を伐採したりすることを禁じたり,葬式料を下げさせたりして平民を保護し,支配の社会的基盤を固めようとした。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ウルカギナ」の意味・わかりやすい解説

ウルカギナ
うるかぎな
Urukagina

生没年不詳。シュメール初期王朝時代(前2350ころ)のラガシュ都市国家の王。ウルイニムギナと読むほうが正しいとされている。治世中に書かれた多数の粘土板文書があり、シュメール社会経済史の研究に貴重な資料となっている。また、統治理念を書き記した、いわゆる「改革碑文」には、神の家、畑を神に戻したとの記述がある。それが、シュメールは神殿都市であるという根拠になっているが、単なる考え方を記述しただけで実体はなかったという批判が有力になっている。孤児、寡婦を保護したという記述は、『ハムラビ法典』に継承される社会正義の最初の宣言であるとされる。同王の時代ラガシュは、隣接する都市国家ウンマのルガルザゲシに敗れ、神殿を焼かれ、略奪を受けた。

前田 徹]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ウルカギナ」の意味・わかりやすい解説

ウル=カ=ギナ
Uru-Ka-Gina

古代シュメールの都市国家ラガシュの初期王朝時代末期の王 (在位?~前 2375頃) 。悪弊を廃し,秩序を回復するため,社会改革を断行した。のち隣国のウンマに敗れ,独立を失った。発掘されたウル=カ=ギナの法令は,法律,政治に関する史料として重要。

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山川 世界史小辞典 改訂新版 「ウルカギナ」の解説

ウルカギナ
Urukagina/Uruinimgina

近年はウルイニムギナとも読まれる。前24世紀後半のラガシュの王。王位を簒奪して即位。弱者の保護を唱える「改革碑文」を残したことで有名。のち隣国のウンマに滅ぼされた。

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旺文社世界史事典 三訂版 「ウルカギナ」の解説

ウルカギナ
Urukagina

生没年不詳
前2370年ごろの古代メソポタミアの都市国家ラガシュの王
世界最古の立法者。

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世界大百科事典(旧版)内のウルカギナの言及

【シュメール】より

…このIII期に初めてシュメール,アッカド全体が一つの政治舞台となり,対エラム防衛の戦略上の拠点ギルス・ラガシュ複合都市国家に,エアンナトゥムを第3代の支配者(エンシ)とする,ウルナンシェの創始した9代にわたる王朝が出現し,彼らの政治的碑文が初めてこの地の政治史の再構成を可能にする。ことに第7,8代の支配者と最後の簒奪王・改革王ウルカギナの3代の治世からは,III期の初めあるいは半ばに位置するとされる〈シュルッパク文書〉よりさらに詳細かつ凝縮的となった行政・経済文書が出土して,緊張の極に達したシュメール都市国家の権力基盤や社会・経済組織解明の鍵を提供する。ウルカギナはラガシュ都市国家の宿敵ウンマの支配者ルガルザゲシに倒され,ルガルザゲシはウルク王となってシュメール,アッカドの全土を征服するが(ウルク王の在位25年),セム系のアッカド王サルゴンに敗れ,シュメールの地はアッカド帝国の支配下に入った。…

【メソポタミア】より

…王朝の5支配者に続いて3支配者が多くの政治的碑文を残している。最後のウルカギナ(ウルイニムギナ)はウンマのルガルザゲシに敗北した。ルガルザゲシはウルク王になるとともに他都市をも軍事占領し,ここにシュメール都市国家時代が終わるが,のちルガルザゲシはセム系アッカドのサルゴンに敗れた(前24世紀中葉)。…

※「ウルカギナ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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