ラガシュ(読み)らがしゅ(英語表記)Lagaš

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ラガシュ」の意味・わかりやすい解説

ラガシュ
らがしゅ
Lagaš

古代メソポタミア南部、シュメールの一都市。遺跡は沼沢の中に位置し、アル・ヒッバAl Hibbaとよばれる。楔形(くさびがた)文字では「鳥の群がる(町)」と書かれ、ラガシュと読まれた。紀元前2500年ごろウル・ナンシェが王朝(前2500ころ~前2350ころ)を創設し、シュメールの有力都市となったが、隣接都市ウンマとはつねに境界紛争を重ねた。ラガシュはギルスGirsu(現名テッローTelloh)、ニナNina(現名スルグルSurghul)その他の小都市とともに複合都市ラガシュを形成していた。ウル・ナンシェの孫のエアンナトゥムは有名な「禿鷹(はげたか)碑文」のなかで、シュメール・アッカド地方のみならずエラムの諸都市をも征服したと誇っている。しかし、ウルカギナ王のとき(前2350ころ)、ギルスを除くラガシュはウンマのルガルザゲシによって滅ぼされた。約200年後、グデア王によってラガシュは一時再興されるが、ウル第三王朝時代にはしだいに衰退し、カッシート時代以後は記録にその名が現れなくなった。

吉川 守]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ラガシュ」の意味・わかりやすい解説

ラガシュ
Lagash

チグリス川ユーフラテス川の中間にあったシュメールの古代都市。起源は先史時代ウバイド期までさかのぼり,前 2700~2400年最盛期を迎えた。現イラク南東のテルローにあたる。 1877年以来フランスの H.サルザクらによって発掘が進み,出土した膨大な楔形文字の粘土板,円筒碑文などは経済,宗教文書を多く含み,前3千年紀のシュメール文明を研究するうえで最も貴重な史料とされている。ウルク,ウンマの諸都市と抗争し,エ=アンナ=トゥム王の対ウンマ戦勝記念を示す『禿鷹の碑』が残っている。ほかに有名な王としては像が出土しているグデア減税などの社会改革を行なったウル=カ=ギナなどが知られる。のちアッカドのサルゴン王の支配下に入り,都市自体は3世紀まで存続した。

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