日本大百科全書(ニッポニカ) 「ラガシュ」の意味・わかりやすい解説
ラガシュ
らがしゅ
Lagaš
古代メソポタミア南部、シュメールの一都市。遺跡は沼沢の中に位置し、アル・ヒッバAl Hibbaとよばれる。楔形(くさびがた)文字では「鳥の群がる(町)」と書かれ、ラガシュと読まれた。紀元前2500年ごろウル・ナンシェが王朝(前2500ころ~前2350ころ)を創設し、シュメールの有力都市となったが、隣接都市ウンマとはつねに境界紛争を重ねた。ラガシュはギルスGirsu(現名テッローTelloh)、ニナNina(現名スルグルSurghul)その他の小都市とともに複合都市ラガシュを形成していた。ウル・ナンシェの孫のエアンナトゥムは有名な「禿鷹(はげたか)碑文」のなかで、シュメール・アッカド地方のみならずエラムの諸都市をも征服したと誇っている。しかし、ウルカギナ王のとき(前2350ころ)、ギルスを除くラガシュはウンマのルガルザゲシによって滅ぼされた。約200年後、グデア王によってラガシュは一時再興されるが、ウル第三王朝時代にはしだいに衰退し、カッシート時代以後は記録にその名が現れなくなった。
[吉川 守]