18世紀フランスを代表する彫刻家。ベルサイユに生まれる。父親が王立アカデミー付属の学校の鍵番であったため,少年時代から美術に親しみ,9歳の時から彫刻を始めた。1761年ローマ賞を得て64-68年の間,イタリアに学び,古典に熱中するとともに,解剖学的な形態研究にうちこむ。パリでは,すでに公的なポストが占められていたため,個人の注文によって制作せざるをえなかったが,それらの顧客のなかには,ザクセン・ゴータ公などがおり,ウードンは,この友人ディドロの推薦をえた顧客のために,著名な大理石の《ディアナ》を制作している。この作品はのちにエカチェリナ2世の所蔵となった(現在,リスボンのグルベンキアン美術館蔵)。エカチェリナ2世もまたウードンの顧客であった。この作品は,典型的なルイ16世様式の,装飾的な女神像であるが,彼の本領は,何よりも肖像彫刻に示された。彫刻家の第一の義務は,形態の真実性を守ることにあると信ずる彼は,しばしばモデルの直接の型取りを行い,J.J.ルソー像(1779)制作の際には,デスマスクをもとにした。またワシントン像の制作をバージニア州から依頼されたとき(1785),その生地マウント・バーノンにまででかけ,またボルテール像(1781,コメディ・フランセーズ蔵)の際には,この哲学者の死の直前までポーズをとらせている。
ロココ風の繊細さと解剖学的真実とをともに追求する彼の肖像は,女性像や子どもの肖像でも名声を得た。しかし,彼を18世紀フランスの代表的彫刻家とするのは,前述のルソー,ボルテール,あるいはベンジャミン・フランクリン(1778)など同時代の知性を,単なる写実性ではなく,知的理解と,機敏な心理表現によってとらえ,真の意味での個性表現を確立した点にある。彼はナポレオン時代まで生きたが,晩年は,小作品を制作するにとどまった。
執筆者:中山 公男
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18世紀フランスの彫刻家。ベルサイユに生まれる。ルモワーヌおよびピガルに学び、1761年にはローマ賞を獲得。64~68年イタリアに留学。古典の研究のかたわら解剖学的研究を行い、帰国後、ディドロの紹介によってゴータ公の庭園のために制作した『ディアナ』(リスボン、グルベンキァン美術館)などの神話的図像の作品で名声を得、またルイ16世時代の様式を確立する。他方、肖像彫刻においてもこの時期の指導的な彫刻家であり、ディドロ、ボルテール、J・J・ルソー、ベンジャミン・フランクリンなどの彫像を残している。解剖学的真実を求める彼は、ルソーのデスマスクを用い、またボルテールの場合には死の前夜までポーズさせている。同時に彼は、これらの個性を表情や姿勢や視線の動きのなかにとらえ、その点でも18世紀的な作風を確立した。
[中山公男]
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