日本大百科全書(ニッポニカ) 「エウセビウス」の意味・わかりやすい解説
エウセビウス
えうせびうす
Eusebius
(263ころ―339)
キリスト教最初の教会史家。「教会史の父」とよばれる。パレスチナ、カエサリアの主教。ニカイア公会議(325)では、彼の神学的傾向(オリゲネス的従属論)からアリウスに同情しつつも、結局は「ニカイア信条」を承認し、のちにはその信条に反対するなど、つねにコンスタンティヌス大帝の政策を支持した。彼の立場は、大帝への迎合のそしりを受けながらも、教会によって統一された世界国家の実現を目ざしたものといえる。著作中で『教会史』と『年代記』とは、今日でも初代教会を知る貴重な史料であり、また、皇帝を地上における神の支配の模写とたたえた『コンスタンティヌス伝』も彼の作とされている。
[菊地栄三 2017年11月17日]