山地や原野に普通に見られるエゴノキ科の落葉小高木で,春に白い花が小枝から垂れて咲く姿が美しい。古名チシャノキ。高さ10mに達し,よく萌芽してしばしば株立ちとなる。樹皮は暗灰褐色,2年枝では糸状にはげる。葉は互生し,長楕円形で先は長くとがり,基部はくさび形,長さ4~8cm,縁に低い鋸歯がある。4~5月,新枝端から2~3cmの柄で1~4花の総状花序を垂らす。各花の萼片は5浅裂し,5深裂する白い花冠の内側に10本のおしべがつき,めしべの長い花柱を取り囲む。秋に長さ約1cmの卵円形の蒴果(さくか)を結ぶ。北海道渡島から琉球諸島までと,朝鮮,台湾,中国およびフィリピン北部の温帯ないし亜熱帯北部に分布する。材は硬く,ろくろ細工などに用いられる。エゴサポニンを含む果皮を洗濯に利用したり,川に流してウナギなどの魚をとるのに用いられたので,セッケンノキやドクノミなどと呼ぶ地方もある。また庭園樹として栽植されることもある。香料として用いられる安息香は,東南アジアや南アメリカ産の同属のS.benzoinの樹皮から採られる樹脂である。
執筆者:濱谷 稔夫
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エゴノキ科(APG分類:エゴノキ科)の落葉小高木。樹皮は暗灰色で滑らか。葉は互生し、卵形、長さ4~6センチメートルで、縁(へり)に低い鋸歯(きょし)がある。5~6月に白花が下向きに開く。花冠は径約2.5センチメートルで深く5裂し、雄しべは10本。果実は卵状楕円(だえん)形、長さ約1センチメートルで堅く、灰白色の星状毛を密布する。9月に熟し、不規則に破れて褐色の種子が1個出る。北海道南西部から沖縄に生育し、朝鮮、中国、フィリピンの山野に分布する。変種のオオバエゴノキは葉が大きく、伊豆以南に分布する。果皮はエゴサポニンを含み、洗濯用にするが、有毒である。種子は脂肪油が多くヤマガラが好んで食べる。材は玩具(がんぐ)、将棋の駒(こま)、櫛(くし)にする。枝先にエゴノネコアシとよぶ灰白色の虫こぶがつく。『万葉集』には山萵苣(やまちさ)の名で出てくる。エゴノキ属は約130種が北アメリカ、アジア、ヨーロッパに分布する。
[小林義雄 2021年4月16日]
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