改訂新版 世界大百科事典 「ヤマガラ」の意味・わかりやすい解説
ヤマガラ (山雀)
varied tit
Parus varius
スズメ目シジュウカラ科の鳥。全長約14cm。頭とのどは黒く,額,ほお,後頭部は淡褐色をしている。背から尾にかけては青灰色,胸から腹部は栗色。日本,朝鮮半島南部,台湾にだけ分布する。平地から山地のよく茂った照葉樹林や落葉広葉樹林にすみ,1年を通じて同じ場所で見られることが多いが,秋・冬季には,平地の明るい林や雑木林に漂行するものもいる。おもに高木の枝葉で採食し,昆虫を主食にしている。しかし,エゴノキやシイの実などがなる季節には,それらも食べ,あまったものは隠し場にたくわえる習性がある。
1年を通じてつがいでくらしていることが多く,この種だけで群れになることはない。繁殖期には,雄はこずえでツツピー,ツツピーと繰り返しさえずる。さえずり以外では,雌雄ともツツゼーゼーゼーという声をよく出す。森林内の樹洞で営巣し,巣箱もよく利用する。巣材にはコケを多量に使い,産座には樹皮を敷く。1腹の卵数は5~8個,抱卵は雌が,育雛(いくすう)は雌雄で行う。
執筆者:樋口 広芳
民俗
昔話の〈鳥呑み爺〉では,あまりにも美しい声で鳴くので,爺が思わずのみ込んでしまう鳥の一つになっている。人によく慣れるので,古来飼鳥とされてきた。反り身になって宙返りする性質があるので,かつては種々の芸を仕込んで見世物とし,金銭を得る者もあった。その演目には,水くみ,宙返り,おみくじ引きなどがある。このように芸を覚える小利口な鳥として知られるので,こざかしいが実際の役には立たない者を評して〈山雀利根(やまがらりこん)〉といったりする。江戸時代の《飼籠鳥》に,山人はヤマガラを干して保存食にあてたとあるが,その肉はまずく,ふだんはこれを食することはなかったようである。
執筆者:佐々木 清光
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報