アメリカの精神分析学者。ドイツのフランクフルトでユダヤ系デンマーク人医師の家庭に生まれる。大学を中退し画家として各地を遍歴した後,A.フロイト指導下のウィーン精神分析協会で学ぶ。1933年,ナチスの迫害を逃れて渡米。この移民の体験も加えたマージナル・マン(確固とした居場所のない境界人)としての自己体験,精神分析医としての臨床体験に基づいて,現代アメリカの社会・文化と個人のかかわりを説明するため,アイデンティティ論を形づくった。34年以降,ハーバード,イェール,カリフォルニア(バークレー)の各大学で研究を続け,子供の発達に関する文化人類学的研究にも関心を広げた。マッカーシイズムで50年バークレーを退職,オースティン・リッグズ・センターを経て,60年にはハーバード大学人間発達講座の教授となる(正式な学歴を持たない人間としては異例)。のち,シカゴのロヨラ大学エリクソン研究所顧問。主著には《幼児期と社会》(1950),《青年ルター》(1958),《アイデンティティ》(1968)などがある。ピュリッツァー賞を受賞した《ガンディーの真理》(1969)はアメリカの戦闘的非暴力の行動に一つの思想的よりどころを与えた。
執筆者:草津 攻
スウェーデン生れの技術者。1826年ロンドンに渡り,当地で蒸気機関車を製作,レーンヒル鉄道での機関車競走に参加したが,G.スティーブンソンに敗れた。その後,36年実用的舶用スクリュープロペラで特許を得たもののイギリスでは注目されず,39年アメリカ海軍の招きでニューヨークへ渡り,世界初のスクリュープロペラ推進軍艦として建造されたプリンストンを設計した。さらに南北戦争中には水面すれすれにある装甲甲板上に旋回する装甲砲塔のみを備えた北軍の装甲砲塔艦モニターを設計,以降の軍艦の発達に大きな影響を与えた。このほか,熱機関,大砲,魚雷などで多くの発明,改良を行った。48年アメリカに帰化,同国で死去したが,スウェーデン政府の要請により,遺体は故国に返還された。
執筆者:在田 正義
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…演劇論は対人関係の葛藤のドラマを描き出しはするが,関係のもとに身を処する当の主体の内面的葛藤,その発達心理については,分析を十分に施していないきらいがある。一方,後者の使われ方は1960年代に広がりをみせた,青年の自己表出現象にひとつの思想的拠り所を与えたエリクソンの考え方が,その代表的なものであろう。エリクソンは,アイデンティティを個人の心理的核心を意味するものと考える。…
…クレッチマーが強調したのは内分泌機能の変動による心理的本能の作用であり,この危機の発現に生理学的成熟が大きな役割をはたすものとした。思春期の危機的状況をより心理的な側面からとらえようとする見解のなかで,有名なのはアメリカの精神分析学者E.H.エリクソンのものである。エリクソンは,彼のいう〈同一性(アイデンティティ)〉の解体とその新たな確立とが要求されるとき生じる〈同一性危機〉の一つの典型として,思春期にあらわれるそれをあげた。…
…(1)パーソナリティと社会的性格の研究 〈文化とパーソナリティ〉という視野の下での国民的性格,基本的パーソナリティなどの研究,またE.フロム,T.W.アドルノらによって推進された権威主義的性格の研究などがあげられる。〈他人志向型〉性格の提唱で知られるD.リースマンの大衆社会のパーソナリティの考察や,アイデンティティの危機を発達過程や社会的・歴史的経験と関連づけて追究しているE.H.エリクソンの業績なども重要である。(2)個人の行動や集団内行動の研究 実験的方法とデータの数量的処理によってとくに多くの研究が蓄積されている分野であり,認知やモティベーション(動機づけ)の研究,態度論,集団規範などの研究がそれである。…
…このほか,神学者のR.オットーのように宗教体験の基礎に神秘的な畏怖の感情(ヌミノーゼ)を想定する見方や,文化人類学者のB.マリノフスキーやA.R.ラドクリフ・ブラウンのように宗教と不安の相関関係を重視する立場,あるいはアメリカにおける宗教心理学の基礎を築いたE.D.スターバックやW.ジェームズのように,宗教的な回心を人格的な成熟の問題に結びつけて考えるいき方などがあった。そしてフロイトの流れとアメリカ心理学の伝統を統合した形で,宗教に対する新しい見方を打ち出したのがE.H.エリクソンである。エリクソンによれば,宗教的カリスマの精神‐心理的な中核は,彼を取り巻く共同体の伝統と信条との同一化に失敗するとき神経症的な危機に陥り,それに成功するとき自己の使命と役割を自覚するという。…
…これに続く者として,フロイトの精神分析から現代精神分析への転向を方向づけたライヒ,超自我の早期形成の影響を解明したM.クラインなどがあげられる。またE.H.エリクソンは人格の形成に関する精神分析理論に比較文化論的・対人関係論的見地を導入した。彼は人格の漸成的発達の理論として八つの年代の発達図式を提示した。…
…このフロイトの自我研究を継承発展させ自我の積極的機能を明らかにした代表者は,フロイトの娘であるA.フロイト,ならびにH.ハルトマンらであり,彼らにはじまる自我心理学ego psychologyは,以後アメリカにおける精神分析学の主流となった。この系譜に属するE.H.エリクソンの自我の心理的‐社会的発達理論,すなわちアイデンティティ形成理論は,臨床的にも社会学的にもきわめて有用な概念である。いわゆる新フロイト派は,アメリカにおける正統精神分析学派に対する批判者の一群であるが,フロイトの生物学主義的な本能論と決別し,パーソナリティの形成や神経症の発生に関し,文化的・社会的要因を強調する点で共通する。…
※「エリクソン」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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