砲艦(読み)ホウカン(英語表記)gunboat

翻訳|gunboat

デジタル大辞泉 「砲艦」の意味・読み・例文・類語

ほう‐かん〔ハウ‐〕【砲艦】

海岸河川警備に用いられる喫水の浅い小艦。
大砲を積んだ艦。

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精選版 日本国語大辞典 「砲艦」の意味・読み・例文・類語

ほう‐かんハウ‥【砲艦】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 大砲を積んでいる艦。
    1. [初出の実例]「我の所謂砲艦は彼の所謂砲艦に比すれは、未た慢夷の膽を呑に足らす」(出典:徳川禁令考‐前集・第二・巻一二・元治元年(1864)正月二七日)
  3. 喫水が浅く、軽易な武装を有する小艦。海岸に近接し、または河川を遡行して陸上の敵を攻撃することを主任務とする。
    1. [初出の実例]「磐城海門等の砲艦、及び水雷艇は遂に栄城湾に帰る能はずして」(出典:愛弟通信(1894‐95)〈国木田独歩〉威海衛艦隊攻撃詳報)

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改訂新版 世界大百科事典 「砲艦」の意味・わかりやすい解説

砲艦 (ほうかん)
gunboat

1800年ころには,船形に比べ大型の大砲を数門搭載した沿岸警備用の小型帆走軍艦をいった。1850年代に沿岸警備用の小型汽走軍艦が生まれ,その艦種名となる。しかし,国,時代により概念は異なり,小型の軍艦を総称した場合もある。砲艦は最も大型のものでも約2000トン以下程度で自国の沿岸のほか,植民地や中国などでその警備や権益確保のために使われた。中国の長江揚子江)にはイギリス,アメリカ,日本など列強が河用砲艦を派遣したが,河用砲艦は遡江(そこう)するために喫水が非常に浅く,約100~500トン,武装は小口径砲数門程度,小型艦では機関銃若干のみであった。日本では明治維新後,旧型の汽走軍艦など小型艦を砲艦に分類,19世紀末にこれを改訂し沿岸警備用の艦種名とした。第2次大戦後砲艦は廃れ,現在は存在しない。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「砲艦」の意味・わかりやすい解説

砲艦
ほうかん
gunboat

沿岸,港湾,河川などの警備用の比較的小型,低速の軍艦。最近はミサイル装備の高速砲艇もある。若干の航洋性をもつ沿岸用は,1000~2000t,河用砲艦は 200~500t程度であった。なかには水雷砲艦と称して魚雷を装備するものもあった。砲艦が最も活躍したのは第2次世界大戦以前の中国で,沿岸および可航水域のあらゆる場所にイギリス,アメリカ,日本,フランス,イタリアなどの砲艦が存在していた。日本の『橋立』は排水量 1000t,速力 19.5kn,12cm高角砲3を装備し,沿岸,河川両用で,司令部用の旗艦施設をもっていた。『伏見』は排水量 300t,速力 17knの河用砲艦で,揚子江上流の三峡の嶮の減水期に航行可能であった。河用砲艦の特徴は浅喫水 (おおむね 1.5m以下) で,8cm程度の高角砲,あるいは陸上射撃用の曲射榴弾砲および機銃 (対空水平両用) で武装していた。ベトナム戦争でアメリカ,南ベトナム側の使用した河用砲艇は,100t以下で,なかには 10t以下の小艇もあり,85~105mm程度の榴弾砲や迫撃砲および機銃を装備し,速力は高速のもので 20kn以下,低速のものは 10kn以下で主としてメコン川就役した。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「砲艦」の意味・わかりやすい解説

砲艦
ほうかん
gunboat

湖水や河川など穏やかな水面での作戦を主目的とする小型、浅喫水の軍艦。航洋能力に重きを置かないかわり、居住性と通信能力に意を用いてある。日本海軍は揚子江(ようすこう)警備のため橋立(はしだて)型(基準排水量999トン)、伏見(ふしみ)型(304トン)、熱海(あたみ)型(205トン)などの砲艦を建造した。水上艦との戦闘は予期していないので比較的軽武装で、橋立型でも12センチ高角砲三門を備えるのみだった。イギリスやドイツもアフリカで湖水用の砲艦を配備した歴史をもっている。またベトナム戦争の際にはアメリカがメコン川に砲艦(艇)を浮かべ、対ゲリラ作戦に使った。砲艦外交のことばが示すように植民地支配もしくは大国による力の誇示を目に見える形で示す政治的な武器として使われることが多い。

[前田哲男]

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百科事典マイペディア 「砲艦」の意味・わかりやすい解説

砲艦【ほうかん】

主として港湾,沿岸の警備に用いられた小型低速の軍艦で,比較的大口径の砲をもつ。第2次大戦前は数百トンの河川用砲艦から数千トンの航洋砲艦まであった。現在は沿岸砲撃用の1000トン級のロケット砲艦や,駆潜艇などの備砲を強化した警備用のモーター砲艦などがある。

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