エルニ(読み)えるに(英語表記)Hans Erni

日本大百科全書(ニッポニカ) 「エルニ」の意味・わかりやすい解説

エルニ
えるに
Hans Erni
(1909―2015)

スイス画家、彫刻家、デザイナールツェルン生まれ。建築事務所での見習いを経て、ルツェルン、パリ、ベルリンで美術を学ぶ。1935年に最初の絵画展をルツェルンで開く。スイスを中心に公共施設や国際博覧会において数多くの壁画を制作し、また、ザルツブルクチューリヒで上演されるオペラ作品(モーツァルトストラビンスキー)の舞台装置や衣装デザインも手がける。その活動領域は、セラミックタペストリーなど、ほとんどあらゆるジャンルに及んでいるが、闊達(かったつ)な線描によるポスター・デザイン、本の装丁イラストレーションの仕事がもっともよく知られている。1976年に「ハンス・エルニ財団」、1979年には「エルニ美術館」がルツェルンに設立された。

 エルニは90歳を超えても現役で活躍し、2000年1月にはジュネーブにある「世界経済フォーラム」(世界の大手企業などで組織する民間団体)の国際会議センターのホールに、風力水力海洋あるいはバイオエネルギーなどの、いわゆるクリーンエネルギーをテーマとする作品『CLEAN ENERGY』を制作、設置した。

村田 宏]

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百科事典マイペディア 「エルニ」の意味・わかりやすい解説

エルニ

スイスの画家,デザイナー。ヨーロッパ各地を旅行し,ピカソブラックカンディンスキーらと知り合い,アプストラクシヨン・クレアシヨンに参加。1939年チューリヒで開かれたスイス展の壁画で認められた。抽象形態と写実との総合を目ざし,絵画,壁画,挿絵,ポスターと幅広い活動を続け,特に商業デザイン分野で活躍。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「エルニ」の意味・わかりやすい解説

エルニ
Erni, Hans

[生]1909.2.21. ルツェルン
スイスの画家,デザイナー。 1931年「抽象・創造」グループの創立に参加,しばらく純粋抽象様式の作品を制作。 39年チューリヒの博覧会で壁画『スイス,憩いの国』を制作。その抽象形体と写実主義とを総合した試みにより注目を浴びる。 1940年代以後,ピカソ,アルプ,ミロ,モンドリアンらの影響のもとに写実・抽象主義シュルレアリスムが混和する独自の作風を展開。特に線描表現が重要な要素となる。中心テーマとしては,工業化社会における人間や人種的偏見,発展途上国の紛争などが扱われ,表現手段も油絵,モザイク,フレスコ,石版画,陶画など多岐にわたる。また挿絵やポスターなど商業美術の分野でも活躍。

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