エンドウ(その他表記)pea
garden pea
Pisum sativum L.

改訂新版 世界大百科事典 「エンドウ」の意味・わかりやすい解説

エンドウ (豌豆)
pea
garden pea
Pisum sativum L.

マメ科の一~二年草。さやの硬軟により2亜種に分けられている。ssp.arvense Poir.はさやが硬く,紅花系で,主に豆用。ssp.hortense Asch.はさやは軟らかく,一般に白花系で,サヤエンドウグリーンピース用に栽培される。茎はつる性で,高さ1.5~2mになるが,50cmほどの矮性(わいせい品種もある。葉は複葉で,羽軸の先が巻きひげになり,支柱にからみついて生長する。上位の葉腋(ようえき)から長い花梗が出て,先に1~数個の蝶形花が咲く。花弁5,おしべ10,めしべ1よりなり,花期は晩春で,花色は白色または紅色,紫色である。さや内には5~6粒の種子(豆)がある。豆は完熟してしわのよるものが多く,黄緑色茶色,まだらなどがある。起源については諸説があるが,近東地域に野生するP.humile Boiss.et Noë.が祖先種であるとする説が最近有力である。古代ギリシア・ローマ時代にはすでに栽培されていた。中国へは5世紀に伝わり,日本へも9~10世紀には渡来したと考えられ,《和名類聚抄》にノラマメとの記録がある。世界の主産国は旧ソ連,中国などで,日本では北海道が多い。ふつう秋まきして翌年4月から収穫する。東北北部や北海道では春まき,また暖地の無霜地帯では夏の終りにまいて冬に収穫する栽培もある。酸性土壌連作に弱い。

 若いさやを食用にするサヤエンドウは,さやが軟らかく大型で長さ10cmに及ぶものがある。生豆(むき実,グリーンピース)用は豆が大粒で,甘みと香気があるいわゆるシュガー・ピーが多く,アラスカという品種が世界的に有名である。完熟豆用の品種からとれる豆は,煮豆,あん,醸造原料用などに用いる。茎葉は飼料にもされる。またメンデルがエンドウを用いた実験から,遺伝の法則を発見したことは有名である。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「エンドウ」の意味・わかりやすい解説

エンドウ
えんどう / 豌豆
pea
[学] Pisum sativum L.

マメ科(APG分類:マメ科)の一、二年草。茎は高さ1.5~3メートルになるが、矮性(わいせい)種では約50センチメートル。葉は複葉で、軸の先が巻きひげになる。晩春に上位の葉腋(ようえき)から長い花柄を出し、1ないし数個の蝶形花(ちょうけいか)をつけ、花色は白、紅、紫。花弁5枚、雄しべ10本、雌しべ1本。莢(さや)に5、6個の種子(豆)ができる。豆は薄緑色、茶色、まだらなどで、完熟するとしわのよるものが多い。中近東地域に野生するP. humile Boiss et. Nöe.が祖先種だとする説が有力である。古代ギリシア・ローマ時代から栽培されていた。中国には5世紀に伝わり、日本には9、10世紀までに渡来したと考えられている。世界の主産国は旧ソ連地域、中国である。栽培は秋播(ま)きで、翌年4月の収穫が多いが、東北地方北部や北海道では春播き栽培も行われる。暖地の無霜地帯では晩夏播き冬穫(と)り栽培もある。酸性土壌と連作には適さないので注意を要する。

 エンドウのもやしは豆苗(とうみょう)と称し、中国料理に用いる。また茎葉は飼料とする。栽培品種は用途別にさまざまに分化している。サヤエンドウには多くの専用品種があるが、実用上、キヌサヤエンドウと大ザヤエンドウとに大別される。キヌサヤでは、伊豆半島でおもに栽培される「伊豆赤花」や、渥美(あつみ)半島の「渥美白花」が有名で、正月用の煮物などに使われる。大ザヤはヨーロッパ系エンドウの系統に属するもので、代表種には「フランス」(仏国大莢)や「オランダ」がある。莢が10センチメートル以上になっても軟らかい。

 種子が緑色のうちに利用するのがむきみ用すなわちグリーンピース(青実用)である。豆は大粒で、豆ご飯や塩ゆでにしてつまみにする。まだ緑色の実を莢から取り出して缶詰にする。また、味つけしたシロップに漬けたものをシュガーピーとよぶ。ゆでたものを冷凍加工にもする。完熟豆を利用するものは実取りエンドウとよばれ、豆の色には緑、赤、褐色のまだら、黄白などがある。水でもどして煮豆(鶯豆(うぐいすまめ))、製餡(あん)、塩ゆで、塩炒(い)り、業務用みその原料にする。赤エンドウはみつまめに用いられる。

[星川清親 2019年10月18日]


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普及版 字通 「エンドウ」の読み・字形・画数・意味

【猿】えんどう(ゑんだう)

さる。てなが猿。唐・李白〔蜀道難〕詩 鶴(くわうかく)の飛ぶも、ぐることを得ず 猿、度(わた)らんと欲して、攀(はんゑん)を愁ふ

字通「猿」の項目を見る


】えんどう

手長猿。

字通「」の項目を見る

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「エンドウ」の意味・わかりやすい解説

エンドウ(豌豆)
エンドウ
Pisum sativum; pea

マメ科の一年または二年草。ヨーロッパ原産。最も古い作物の一つで,世界各地に広く栽培されている。したがって変種や品種も多いが,花が白色のものをシロエンドウ,赤色または紫色のものをアカエンドウ P. sativum var. arvense という。草丈の低い品種もあるが,普通は高さ 1.5mぐらいに達する。葉は 2~3対の卵形または楕円形の小葉からなる羽状複葉で,先端に巻きひげがあり他物に巻きつく。葉腋から花軸を出し,その先に普通 2個ずつの蝶形花をつける。未熟の豆果をサヤエンドウとして食べたり,熟した種子をグリーンピースとして食べたり,あんにつくって菓子の原料にする。なお,エンドウを使ってグレゴール・ヨハン・メンデルが遺伝の法則(→メンデルの法則)を発見したことは,よく知られている。

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百科事典マイペディア 「エンドウ」の意味・わかりやすい解説

エンドウ(豌豆)【エンドウ】

西アジア〜南欧原産のマメ科の野菜。茎は約1mに達し先端は巻きひげとなる。冷涼な気候を好み,耐寒性が強いが,連作には不適。さやが柔らかい品種の未熟な果実をサヤエンドウという。また,さやのかたい品種の成熟した種子をムキエンドウといい,煮豆(うぐいす豆),醸造用原料とし,未熟な緑色の種子をグリンピースの原料とする。茎や葉も緑肥,飼料として利用される。主産地は北海道。

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栄養・生化学辞典 「エンドウ」の解説

エンドウ

 [Pisum sativum].バラ下綱マメ目マメ科エンドウ属の食用マメ類の一種.種子や若いさやを食用とする.

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世界大百科事典(旧版)内のエンドウの言及

【豆】より

…広く食用にされているマメ科植物の種子,あるいは若い果実の総称。また,転じて,コーヒー豆のように小さくて丸いものを豆と呼ぶことがある。
[豆類の特性]
 マメ科の植物は,熱帯から寒帯まで,湿潤気候域から乾燥気候域まで広い範囲にわたって生育し,その生活型も70mをこえる高木から,低木,多年草や一年草,あるいはつる植物とさまざまである。しかし,そのような多様さにもかかわらず,マメ科植物の果実は1枚の心皮からなり,側膜胎座を有し,例外的なものを除くと乾果で,いわゆる豆果と呼ばれる独得の形をしている。…

【グリーンピース】より

…エンドウの完熟前の豆。100g当り水分76.5g,タンパク質7.4g,糖質12.0g,ビタミンB10.26mg,ビタミンC24mgを含む。…

【豆】より

…また種子だけでなく,若い未熟な豆のさやを野菜として利用したり,成熟したさやに含有される糖や有機酸を食用にするような利用法も発達した。エンドウやササゲ類のように栽培豆類として発達したものには,種子利用の品種と野菜的利用の品種との分化が著しい。このように多面的に利用されているのも,豆類の特徴とされよう。…

※「エンドウ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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