日本大百科全書(ニッポニカ) 「オウギヤシ」の意味・わかりやすい解説
オウギヤシ
おうぎやし
palmyra palm
[学] Borassus flabellifer L.
ヤシ科(APG分類:ヤシ科)オウギヤシ亜科オウギヤシ属9種中の代表種。葉形が扇に似ているのでオウギヤシという。幹は単幹で直立し、高さ30メートル以下。幹径は35センチメートルであるが、下部はしだいに肥大し基部は径60センチメートル。葉は周径3メートルの掌状葉で光沢のある緑色。小葉裂片は直伸し先は鋭くとがる。葉柄を長期間固着するものがある。花序は葉間から伸び、雌雄異株。雄花は分岐が多く長さ30センチメートル。雌花は分岐が少ない。果実は通例黒褐色で黄色もあり、径15~20センチメートルの球形で花被(かひ)に深く包まれ、1~3個の種子をもつ。
熟果は甘味が強く食用となる。種子はやや扁平(へんぺい)で乳白色の繊維で包まれ、胚(はい)は頂部にある。花柄を切断して分泌する樹液を煮詰めて糖蜜(とうみつ)や砂糖をとり、液を放置するとラム酒になる。サトウヤシsugar palmの代表種であり、酒ヤシtoddy palmの代表種でもある。葉は屋根葺(ふ)きや代用紙に用い、葉柄基部の繊維はブラシや縄に用い、木材は堅く耐久性に富むのでカヌーの舟材にする。インド、ミャンマー、マレーシア、カンボジア、タイに分布する。
オウギヤシ属にはこのほかに、エチオピア、スーダン、アフリカ北部、ニューギニア島に分布するものがあり、果実はすべて黄色。アフリカ産のものは、高木となると幹高の中央が肥大する。
ココヤシ、アブラヤシ、ナツメヤシとともに有用ヤシとして利用される。栽培は30℃以上で多湿を要する。
[佐竹利彦 2019年4月16日]