オヒシバ(英語表記)goosegrass
Eleusine indica (L.) Gaertn.

改訂新版 世界大百科事典 「オヒシバ」の意味・わかりやすい解説

オヒシバ
goosegrass
Eleusine indica (L.) Gaertn.

生活力の非常に旺盛なイネ科雑草元来は北アフリカからインド原産であろうが,現在では世界中の温帯から熱帯に広がり,日当りのよいところならおよそ本種を見ないところはなく,都会の舗装道路の割れ目敷石の間にさえも生えている。一年草で大きな株を作り,全体にある種の香りがある。茎は多少扁平で,高さは30~50cm,下方は多少斜上してまばらに枝分れする。葉は茎の根もとと節につき,茎とともに非常に強靱で,長さ20cm前後の線形で二つ折れとなり,鮮緑色で,縁に毛がまばらに生え,鞘(さや)も扁平である。夏から秋に,茎の頂に開花する。花序は2~6個の細めの枝を束状につけ,枝の長さは8cmくらい,斜めに開き,各枝の片側(下面)に密に小穂をつけ,緑色をしている。小穂は長さ6mmくらいで,2個の小型の苞穎(ほうえい)と数個の小花をつける。日本では北海道を除く全国に見られる。和名雄日芝は細い雌日芝に対するもので,強靱な植物体を意味し,日芝は牧野富太郎によれば夏の炎天下にも盛んに繁茂する草の意である。オヒシバは非常に抜きにくいので,力草(ちからぐさ)ともいう。雑草であるが,食料不足の時にインドなどで食用にされたし,熱帯域では牧草とされる。また中国奥地ではヒツジ飼料にすることがある。雑穀の1種のシコクビエE.coracana(L.)Gaertn.はアフリカやインドや中国では主食用として用いられ,中国や日本でもまれに栽培される。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「オヒシバ」の意味・わかりやすい解説

オヒシバ
おひしば / 雄日芝
[学] Eleusine indica (L.) Gaertn.

イネ科(APG分類:イネ科)の一年草。稈(かん)は硬く、株立ちして高さ30~80センチメートル。8~10月、稈の先に掌状花序をつけ、1~6本の穂状の小花序をつくる。小穂は3~10個の小花をもち、扁平(へんぺい)で無柄、小花序の片側に2列に並んでつく。果実は袋状の胞果となり、横しわがみられる。本州から沖縄、小笠原(おがさわら)の荒れ地や道端に生え、世界の熱帯から温帯にかけて広く分布する。名は、弱々しくみえるメヒシバに対していう。ときに栽培され、果実が大きく、穂状花序の幅が1センチメートルにも達するシコクビエE. coracana (L.) Gaertn.の原種にあたる。

[許 建 昌 2019年8月20日]


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百科事典マイペディア 「オヒシバ」の意味・わかりやすい解説

オヒシバ

イネ科の一年草。世界の熱帯〜暖帯に広く分布し,本州〜沖縄の路傍,野原に普通にはえる。茎は高さ30〜60cm,しばしば分枝し,細長い線形の葉をつける。夏〜秋,掌状に開いた3〜6個の花軸を出し,その下側に小穂を2列に密生する。小穂は4〜5個の小花からなる。雄日芝の名はメヒシバに対して力強い草姿をもつため。近縁のシコクビエはアフリカ原産,かつては山間部の畑地で栽培されたが,今は見られない。アフリカ,インドでは現在も雑穀として重要である。

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